GPUとCPUの違い

先月にAI市場のレポートを書いたが、今回はAIチップ市場について取り上げてみたいと思う。第三次AIブームは2012年からと言われているが、2012 年に世界的な画像認識コンテストである「ILSVRC(Imagenet Large Scale Visual ReCognition)」でニューラル・ネットワークの第一人者ジェフリー・ヒントン博士が率いるカナダ・トロント大学の研究チームがディープラーニングを活用し従来を大きく上回る認識精度を実現したことがきっかけとなった。このディープラーニングの学習では、米NVIDIA(エヌビディア)のGPUが非常に大きな役割を果たした。

GPUとは、グラフィックス・プロセッシング・ユニットの略である。PCの中で、さまざまな計算をする頭脳といえばCPUだが、GPUは3Dの画像処理に特化した半導体チップである。3Dグラフィックスでは2Dの画像に陰影や奥行きを付与して3D的に表現したり、それを連続して行ったりすることで動きを表現する。このとき、画像を構成する個々の画素の値を同時並列で高速に計算するが、これを行うのがGPUであり並列計算を得意としている。

一方、PCやスマートフォンなどに搭載されているCPUが一度に処理するのは1つのデータである。現在のCPUは高性能なので複雑な計算でもあっという間に終わるが、1つずつ順番にデータを処理している。高解像で動きの速い3Dゲームを、CPUだけでこなそうとすると画面の描画処理が間に合わない。このCPUの不得手な高精度のグラフィックス処理を補うのがGPUである。

CPUとGPUの大きな違いが、コア(Core)と呼ばれる演算機構の数である。PCやスマホのCPUではデュアルコア(コア数2)やクアッドコア(コア数4)が典型的なコア数である。CPUは順番にデータを処理していると書いたが、実際には4コアのCPUなら4つの処理を並列して実行できる。

一方のGPUは、単体のプロセッサに数千個のコアを搭載し、大規模並列処理を実行する。

 

AIチップの開発競争

AIの演算処理にはGPUが使われていたが、GPUはAIに特化しているわけではないために消費電力等に問題があった。そこで、AIに特化した半導体チップを作ることで、より消費電力が少なく高性能なAIを実現するべくAIチップが誕生した。

AIの演算処理は、膨大なデータをもとに学習していく「学習プロセス」と、学習した結果をもとに実際のデータで推論を行って結果を導き出す「推論プロセス」の二つに分かれている。この二つのプロセスでは求められる性能が異なるため、それぞれに特化した形でAIチップが設計される。「学習プロセス」向けでは、学習時間をできる限り短縮できるように高い処理性能が、「推論プロセス」向けでは、実際の現場で使いやすいように消費電力の小ささや動作保証環境の幅広さなどが求められる傾向にある。

AIの計算処理に使われるチップでは、米エヌビディアが開発する画像処理用半導体(GPU)が圧倒的に先行していた。しかし、AIに特化して作られていた訳ではなかったためにより消費電力が小さく高性能な半導体チップを作ろうとAIチップ開発競争が始まった。2016年にグーグルが2016年にエヌビディアのGPUよりも消費電力が1ケタ小さいAIチップを開発し、以降アップル、AWS、Facebook、テスラ、中国のファーウェイ、アリババ等中国大手企業や既存の大手半導体メーカーも参入した。

 

AIチップの市場規模

市場調査会社Tracticaの調査によるとAIチップの市場規模が2018年の51億ドル(約5,600億円)から、2025年に726億ドル(約8兆円)と約14倍に膨らむと予測した。AIチップの出荷数も2018年から2025年にかけて約18倍に急増すると予測した。AIチップ市場全体のうち、エッジコンピューティング*1向けが3/4以上を占めると予想されている。

(出典:一般社団法人電子情報技術産業協会 「Connected Industriesの実現に向けた課題と政策」令和元年10月)

*1. エッジコンピューティング:ネットワークの端点でデータ処理を行う技術の総称。

 

日本におけるAIチップ開発

米中対立激化のなか、経済安全保障上の重要性が高まる半導体の開発や投資に各国がしのぎを削っている。米国は国内生産拡大に向け527億ドル(約7兆円)を投じるための新法を成立させ、半導体受託製造世界最大手のTSMCの工場誘致に成功した。日本も6,170億円の基金を活用。欧州連合は1345億ユーロ(約19兆円)、韓国は340兆ウォン(約35兆円)を拠出する計画を発表した。日本の半導体戦略においてAIチップの開発は重要分野の一つで、国が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)に交付金を出して大学、研究機関、民間企業と共同で小型、省エネルギーかつ高度な処理能力を持つAIチップの開発に取り組んできている。

 IoT社会の到来により急増した情報を効率的に活用するためには、従来のサーバ集約型のクラウドコンピューティングに加えて、ネットワークのエッジ側で
中心的な情報処理を行うエッジコンピューティングにより、情報処理の分散化を実現することが不可欠である。エッジ側でAI処理を実現するためには、小型かつ省エネルギーながら高度な処理能力を持つチップと、それを用いたコンピューティング技術が必要である。

 

これまでに開発されたAIチップは「学習」用や、学習を基にして未知のデータを判断する「推論」用も、主にクラウドに搭載され、米国企業や中国企業がけん引してきた。クラウドで学習や推論を行った結果を、インターネットにつながったスマートフォンやセンサーといった端末側(エッジ)に送るのがおおまかな構図だったが、チップが高性能になるにつれエッジ機器にも搭載させる流れへと変わってきている。

すでに、アップルや中国ファーウェイがスマホにAIチップを搭載させているが、今後は自動運転やロボットなど幅広い機器に拡大することが見込まれる。エッジ機器に組み込まれる推論チップの市場規模は、学習用よりも早いスピードで膨張していると考えられるが、その覇権を握る企業はまだ現れていない。ここに、センサーなどのエッジ機器に強みを持つ日本企業にも、大きなチャンスが訪れている。

(出典:エコノミストOnline GAFAも開発に参入 AIチップの8兆円市場  2020年1月27日

 

AIチップ関連銘柄

ここからはAIチップの関連銘柄を紹介する。

 

ルネサスエレクトロニクス(6723)

ルネサスエレクトロニクスの株価情報

企業概要:三菱電機および日立製作所から分社化したルネサステクノロジとNECから分社化したNECエレクトロニクスの経営統合によって、2010年4月に設立された。2021年の半導体企業売上高ランキングで世界15位、日本国内ではキオクシアに次ぐ2位である。車載半導体市場シェアランキングではNXPセミコンダクターズ、インフィニオン・テクノロジーズに次ぎ3位として車載BIG3の一角を占め、特に車載マイコン*1では世界シェアの3割を握る1位である。自動⾞、産業、インフラ、IoT 分野に対して、各種半導体と幅広いソリューションを提供している。。半導体製品としては、世界的に高いシェアを誇る⾞載や産業向けマイコンに加え、高性能な MPU(マイクロプロセッサユニット)や SoC(システムオンチップ)のほか、センサなどのアナログ半導体、パワー半導体、5G 向け RF 製品など、幅広いラインナップを有している。

ルネサスは2015年12月にエッジでAI処理を行う「e-AI」を提唱し、産業機器などに組み込んで推論処理を行う小型で低消費電力のAIチップを開発した。この後2017年にマイコンやマイクロプロセッサ製品にAIアクセラレータを組み込む「e-AI」の戦略を2発表した。2022年には組み込み米国メリーランド州のAIソリューションを提供するReality Analytics, Inc.を買収した。(買収金額は非公表)Reality AI社の推論を行うAIソリューションは、エンドポイントとしてのさまざまなアプリケーションに実装する事ができ、ルネサスのエンドポイント*2向けAIソリューションが大幅に強化された。

ルネサスのe-AIの最大のメリットはリアルタイム性である。 e-AIでは通信経路の遅延なしで判断・応答するため、クラウドに対して速く推論結果が得られる。e-AIはこのリアルタイム性の高さを活かし、連続した入力データを次々とAIで判断するような場面で活用 できる。e-AIの実例はモーターの異常の検知、画像認識によるe-AIマルチモーダル生体認証(パスポート、キャッシュレス決済、IDカード、犯罪履歴等)、工場で欠陥商品の検知等。

2022年12月にルネサスは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共に推論処理を1000倍速く、しかも電力効率を10倍に高めたAIチップを開発し2023年中に市場に投入すると発表した。認識精度を落とさずに計算量を削減する。1ワットで1秒間に最大10兆回の演算ができ、認識精度の低下は3%に抑えた。現場で学習し直すことも可能で監視カメラやロボット、IoTの高度化につながる。ルネサスの動的再構成プロセッサー(DRP)技術を利用し、AI処理で大量に発生する積和演算を効率的に削減した。従来はニューラルネットワークのノード単位で演算を削減したが、DRP技術でノードを結ぶ枝単位で削減できるようになった。監視カメラやロボットが高度な処理をしても発熱を抑えられるようになる。冷却ファンなしで稼働できると適用範囲が広がる。

ルネサスの2022年12月期通期決算結果(IFRSベース)は連結最終利益は前の期比2.1倍の2,566億円に急拡大し、2期連続で過去最高益を更新した。通期の営業利益率は前期比9.8pt改善の28.3%となった。2021年に買収が完了した英Dialog Semiconductorの連結効果や円安効果に加え、自動車向けおよび、データセンターなどのインフラ向けが好調だった。2023年12月期1Qに関しては減収を見込んでいる。自動車向けは引き続き需要が強いが、PC、モバイル、コンシューマー向けを中心に調整局面が続く事から減収、利益率は低下すると会社側は予測している。また、PC、モバイル等コンシューマー向けの調整局面は2Q(4~6月期)になるとみている。

*2. マイコンとはマイクロコントローラ、マイクロコンピュータやMCU(マイクロコントローラ・ユニット)も同じ意味である。極小の制御装置という意味。* 3. エンドポイントとはClosed Network内でも、特に端末側だけで処理を完結する事をいう。

 

株価(2023/2/20)時価総額自己資本比率     ROE    ROIC
  1,718.5円   3.0兆円      54.5%     16.7%    54.5%
       実績PER予想PER      PBREV/EBITDA配当利回り
  12.5倍 N/A      2.0倍   N/A     N/A

 

ローム(6963)

ロームの株価情報

企業概要:電子部品メーカー、カスタムLSI首位。2022年5月にSiCパワー半導体の2025年度売上高目標を1000億円とし、現在SiCパワー半導体で世界四位であるが長期的には世界シェア首位を目指している。世界的なEV化の加速でパワー半導体に注力しているが、AIチップの開発も手掛けている。 詳しくはロームの企業紹介レポートをご参照ください。

ロームは、2022年9月にFA(Factory Automation)ロボットなどの産業機器の故障予知に的を絞ったAI(人工知能)/機械学習に向けて、ニューラルネットワーク(Neural Network:NN)処理の小型回路(Intellectual Property(IP)コア)「AxlCORE ODL」を開発した。このIPコアを集積するマイコンやモーター制御ICは単価1,000円程度と低コストで提供可能な上、推論だけでなく学習もリアルタイムで行える(図1)。その1,000円程度のICを産業機器に搭載すれば、クラウドを利用しなくてもAI/機械学習活用の故障予知が実現できる。ロームは今回のIPコアを集積したICを2024年に量産する計画である。

今回のIPコアベースのICは、低い消費電力とリアルタイムでの学習を実行できることが特徴である。なおチップ単価は、左端の「クラウドコンピュータ向けAIチップ」が数万円から、その右隣の「エッジコンピュータ向けAIチップ」は数千円から、その右隣の「従来エンドポイント向けAIチップ」と右端の「ロームエンドポイント向けAIチップ」は1000円からという。

(出典:日経XTECH  ロームが極小AI回路を開発、1000円のICでもリアルタイム学習 2022年10月06日)

 

   (画像出所:ローム クラウドサーバー不要、現場でリアルタイムの故障予知を実現する、数10mW超低消費電力のオンデバイス学習AIチップを開発

ロームの2023年3月期3Q決算は自動車関連市場及び産業機器関連市場からの売上増により売上(累計)は前年同期比15.4%の3,902億円を達成した。原材料費、販管費の増加はあったが、営業利益は同34.2%増の754億円となった。営業外で為替差益を110億円計上し、経常利益は同46.5%増の905億円、四半期純利益は同40.3%増の679億円であった。主力のパワー・アナログ半導体は特に自動車向けの需給逼迫が継続している状況との事で、通期、また来期も業績をけん引していくものと思われる。来期については自動車生産台数の回復で更に需要が伸びると会社側は予想しており、世界的なEV化の加速から長期的な高成長が期待される。

 

 

株価(2023/2/20)時価総額自己資本比率 ROE   ROIC
    10,530円  1.0兆円      81.6%    7.5%    5.8%
    実績PER予想PER  PBREV/EBITDA配当利回り
      15.5倍   12.9倍  1.2倍    5.7倍    1.90%

 

ソリトンシステムズ(3040)

ソリトンシステムズの株価情報

企業概要:1979年創業、2007年上場。ITセキュリティ製品、リアルタイム映像送信、組み込みシステムなどを開発、販売している独立系メーカー。ソリトンシステムズは、米国でマイクロプロセッサが誕生した頃にインテル社に在籍した鎌田信夫氏(現社長)が、その関連業務や応用研究活動で知り合ったジャーナリスト、大学教授、メーカーの研究員など、11人の博士を含む37人の出資により設立された。ソリトンはその黎明期から、LSIを含む組込みシステムの開発とローカルエリアネットワーク(LAN)に着目、各種デバイスドライバ、ネットワーク管理ソフト、ISDN基板などを開発。同時に大規模ネットワークの構築にも、数多く取り組んできた。近年は、認証を中心としたITセキュリティ関連製品の開発とそれをベースにしたサービスの提供や、携帯電話回線を利用した簡易映像中継システムなどにも注力している。

独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募をしていた「AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業/AIチップに関するアイディア実用化に向けた開発」において、ソリトンシステムズの「再構成可能なアナログニューロン回路を用いた超低消費電力AIチップの開発」の提案が2021年6月に採択された。

ソリトンシステムズは長年にわたり半導体の回路設計に携わっており、最近ではアナログ・ディジタルミックスシグナル回路に関するノウハウを活かして人感センサーチップの設計開発を行い商用化している。また、信号処理の分野においては、FPGA向け高位合成ツールの開発および当該ツールを用いたディープラーニングアルゴリズムの設計開発にも長年携わっている。これらの技術を応用し、数百μW以下の超低消費電力で動作し、各種センサーへの統合が可能なアナログエッジAIチップと当該AIチップの回路を再構成するツールの開発を行う予定である。

現在、AIの活用には以下のように「クラウドAI」と「エッジAI」の2通りがある。ソリトンが今般、開発するアナログエッジAIチップは、上記の「エッジAI」でエッジ側に搭載され、超低消費電力かつ高速で推論処理を行う。例えばIoT機器の音声・ジェスチャーによる制御、機器・インフラの故障検知、生体センサーと統合した体調不良の検出、ロボット制御、自動運転・ドローン制御など幅広い分野のエッジ側で高度な知的機能を付加することが可能となる。アナログエッジAIチップについては、2023年度の商品化を目指している。

(出典:ソリトンシステムズ ニュースリリース:低消費電力エッジAIチップがNEDOに採択 2021年06月23日)

ソリトンシステムズの2022年12月期決算は売上高は、ITセキュリティ事業で業務提携による海外製品が売れたことにより、198億円(前年同期比13.6%増)、営業利益は、増収の主要因が粗利率の低い業務提携製品(海外製品)に多く、想定外の円安により仕入れ価格が上昇、20億円(同▲14.0%)となりました。なお、経常利益は、営業外収益で為替差益9,400万円や助成金収入8,500万円を計上したが、営業利益の減益の影響が大きく、22億円(同▲11.7%)、当期純利益は16億円(同▲15.2%)となった。NEDOに採択されたアナログAIチップは今期中に製品化を目指し試作品をリリースし、数あるアプリケーション分野で検証を進める予定である。

 

株価(2023/2/20)時価総額自己資本比率    ROE    ROIC
       1,006円  186億円       49.8%   16.5%    13.4%
  実績PER予想PER     PBREV/EBITDA配当利回り
   11.7倍  12.6倍       1.9倍    3.3倍     1.99%

 

ソフトバンクグループ(SBG、9984)

ソフトバンクグループの株価情報

企業概要:ソフトバンクグループの持株会社。傘下にベンチャー投資のヴィジョンファンド、携帯事業のソフトバンク(SBKK)、Armホールディングス(英半導体設計大手)等。

SBGが2016年7月に3.3兆円で買収したArmホールディングスのIPOが期待されているが、Armは業績も急拡大している。先日親会社のSBGの決算発表と同時にArmの3QFY2022の決算も発表されたが、以下の内容であった。3Qまでの累計セグメント利益は前年同期比76.6%の549億円となった。

 

(単位:百万円)FY2020FY20213QFY2021(累計)3QFY2022(累計)前年同期比
売上高 209,848300,013     227,370                288,952  27.1%増
セグメント利益*4▲33,87341,200                    31,088                  54,901  76.6%増

*4 セグメント利益には、アーム買収時に行った取得原価配分により計上した無形資産の償却費が、当期は512億円、前期は481億円含まれている。

3QFY2022はArmパートナーによるArmベースチップの出荷数は過去最高となる80億個を記録、累計出荷個数は2,500億個に到達した。
調整後EBITDAは4億5000万米ドル、調整後EBITDAマージンは50%超となった。オートモーティブ、コンシューマー機器、インフラストラクチャ、IoTのすべてのターゲット市場において力強い増収を達成した。各分野で2桁もしくは3桁パーセントの増収を記録した。

売上の内訳は

ライセンス収入3億USD前年同期比65%増主要顧客4社(自動車メーカー、クラウドサービスプロバイダー、大手マイクロコントローラーメーカー、家電向け半導体ベンダー)との新規の戦略的長期契約が寄与
ロイヤルティ収入4億4,600万USD同12%増Armベースのサーバー技術や車載向けArmベースチップなどへの強い需要に加え、プレミアムスマートフォンやクラウドサーバー用途におけるArmv9プロセッサー技術への支持がけん引

 

Armは元々自動車関連市場で強かったが、インフォテイメント(車載インフォテイメント)のマーケットシェアは85%、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems,先進運転支援システム)のマーケットシェアは55%であると言われている。また車載チップを製造している上位15社はArmにライセンス供与されたデザインを使用している。(出典: Financial Times “Chip designer Arm targets car market for growth” JANUARY 4 2023

 

他のマーケットについては高価格帯のスマートフォンの95%がArmデザインを使用している。また、PCのマーケットであるが、2020年にAppleがArmデザインのM1 MacBookを販売して以来Armベースのラップトップのマーケットシェアが2%以下のマーケットシェアから2022年年末には12%まで向上した。Armのシェア拡大とともにインテル、AMDはその分シェアを落とした。

CPUを製造しているQualcommとMedia TechはArmのエコシステムを経験した事があり、Armベースのソリューションに関心があるとの事である。このような背景を加味し、テクノロジー調査会社のCounterpointによると2027年にはArmのCPUのマーケットシェアは25%まで拡大すると予測している。

(出典:Counterpoint “Arm Laptops to Remain Resilient Amid Global PC Market Weakness” FEBRUARY 8, 2023)

 


上述のようにArmは着々とターゲット市場でマーケットシェアを伸ばしている。Armは低消費電力プロセッサに特化しているためにスマホやスマートデバイスで圧倒的なシェアを持っていたが、自動車の世界的なEV化、車載インフォテイメントの高成長から自動車市場向けが大きく成長しそうである。また、PC市場はインテルとAMDが圧倒的に強かったが、アップルのM1 MacBook以来シェアを伸ばしている。これからのAIエッジコンピューティングの普及でArmの業績は高い成長が見込めるであろう。

Armのナスダック上場はマーケットの環境次第になると思うが、一年前にはSBGは600億ドル(約7兆3,400億円)以上の評価額を目指していた。巨額のIPOになる事は間違いなく、SBGの株価水準も跳ね上がるだろう。
 

株価(2023/2/20)時価総額自己資本比率    ROE   ROIC
         5,720円 8.3兆円      21.3%    N/A    N/A
     実績PER予想PER       PBREV/EBITDA配当利回り
          N/A    N/A      0.93倍  N/A    0.77%

 

 

 

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