目次

  1. 債券投資の勘どころ
  2. 米国債券ETF
  3. 予算別投資戦略
  4. まとめ

あなたにとって「理想のポートフォリオ」とはどんなものですか?

年齢、収入、資産背景などにより、理想とするポートフォリオは、それぞれ異なることでしょう。ちなみに投資先進国のアメリカで長く称賛されるポートフォリオがあります。それは「株式60%:債券40%」の組み合わせです。株式の上昇力と債券の安定性のいいとこ取りを狙った戦略で、大手金融機関の調査によれば、1920年以降の年平均利回りは8.8%と、長期的に優秀な運用結果が確認されています。(出所: BofA Global Research)

日本でも内外の株式、REIT、債券など複数の金融商品を組み合わせた「バランスファンド」と呼ばれる投資信託が人気ですが、アメリカの伝統的ポートフォリオは、はるかにシンプルです。

株式と債券を組み合わせた運用ができるのは、米ドルに限りませんが、不思議と日本では60/40戦略がお薦めとの話を聞いたことがありません。その理由は、マイナス金利が長引く日本では、債券投資に魅力が乏しすぎたからではないかと考えます。マイナス金利政策の弊害とも言えそうですが、今後金融引き締め方向への制作の転換が予想される中では、円債投資が見直される可能性はあまり高くなさそうです。

それでは、米ドルでの債券投資を検討してみるにはどうでしょう?

世界最高レベルの信用力を有する米国国債の利回りは、2年物で4.8%、10年物で4.1%程度となかなか魅力的な水準です(2023年8月7日現在)社債などへの投資であれば、さらに高い利回りを期待できます。

アメリカではインフレ抑制のための利上げが繰り返された結果、債券価格が大幅に下落しました。急速な金融引き締めの結果、2022年には株式、債券共に値下がりし、60/40ポートフォリオの成績は100年で最悪という年でした。しかし、インフレ率が低下に転じ、金融引き締めも最終局面と見られる現在は、米ドル債券投資を考えるにはいい環境かもしれません。

(出所: Investing.comで執筆者が作成)

この記事では、ETFを使った米国債投資を予算別で紹介します。債券投資にはとっつきにくいイメージがあるかもしれませんが、株式に比べて値動きは穏やかです。株式ETFと債券ETFを組み合わせることで、60/40の伝統的ポートフォリオを作ることも簡単にできますので、試してみてください。

なお、ETFの詳しい説明については以下の記事をご覧ください。

1. 債券投資の勘どころ

債券投資をとっつきにくくする大きな原因は、価格と利回りの関係だと思われます。債券は投資後、定期的(通常は半年毎)に決まった利息を受け取り、満期時に投資元本が返ってくるという、お馴染みの銀行定期預金とよく似た商品です。ただし、定期預金を時価評価する習慣はないため、価格とか利回りと聞くと、とたんに難しく感じるかもしれません。

債券は政府や企業(発行体といいます)が資金を調達するために発行する金融商品で、通常100円の価格(パーといいます)で発行されて、満期時にも100円で償還されます。この間、定期的に支払われる預金利率にあたるものを「クーポン」と呼び、固定金利が一般的です。

新たに発行される債券を満期まで持ち切る場合、お金の流れは定期預金とほぼ同じです。しかし、債券は満期前に売却、換金することができます。これが定期預金との大きな違いであり、債券価格の理解を必要とする理由でもあります。価格が100円(パー)を下回った状態を「アンダーパー」、100円を上回った状態を「オーバーパー」と言います。ゴルフをされる方には、お馴染みの言葉かもしれません。

具体的な例を使って説明を続けます。ここでは額面1,000,000円(1口)の5年物、クーポン4%の債券(仮称:USA債)がパー(100円)で発行されたケースを想定します。

USA債を購入し満期まで保有する場合、半年毎に20,000円(年間40,000円)の利息を5年間、計20万円(4万円x5年)受け取り、満期時に元本100万円が償還されるという、定期預金と似たお金の動きになります。

一方、満期前に債券を売却する場合、残存期間に対応する債券の利回りによって、お金の動きが変化します。

1. 購入から1年後、4年物債券利回りが5%に上昇した状況(金利が上昇)で債券を売却

    4年物債券を新たに購入すれば、20万円(5万円x4年)の利息を受け取れるのに対し、USA債では発行時に決まった16万円(4万円x4年)しか受け取ることができないため、買い手は損です。

 したがって、USA債の買い手は、売り手に対して4万円分の補填を要求するでしょう。その方法とは債券の価格を96円に下げることです。買い手は96万円でUSA債を購入し、満期時に100万円を受けとることで、利息の不足分4万円を補填することができます。このように金利が上昇し、債券価格が100円を下回った状態が「アンダーパー」です。

2. 購入から1年後、4年物債券利回りが2%に低下した状況(金利が低下)で債券を売却

 4年物債券を新たに購入しても、8万円(2万円x4年)しか受け取れないのに対し、USA債では最初に決まった通り16万円(4万円x4年)の利息を受け取ることができるので、お得です。

 この場合、USA債の売り手は、8万円分の利益を織り込んだ価格でUSA債を売却したいと考え、売却価格として108円を要求するはずです。USA債の買い手は、8万円多い利息を受け取る一方、108万円の購入価格に対して、4年後の償還金額は100万円なので、満期時に8万円損をすることになります。このように金利低下により、債券価格が100円を上回った状態が「オーバーパー」です。

つまり、債券価格に大きな影響を与えるものは、金利の変化や、将来の金利見通しです(発行体の信用力には大きな変化がない前提)。

企業の収益見通しの変動等により常に価格が変動する株式と比べて、価格の変化要因が少なく、最終的にパーで償還される債券の値動きは安定的であり、投資初心者でも投資を検討しやすいと思われます。

2. 米国債券ETF

ETFを使った債券投資は、複数の債券で構成されたポートフォリオに対する投資になるため、個別の債券への投資に比べ、個々の発行体の信用力の変化の影響を小さくする効果があります。また、換金したい時にはいつでも市場での売却が可能です。

そんな債券ETFを選択する基準は、大まかには満期までの期間の長さと、発行体の信用力の違いです。リスク量が大きいものは分配金利回りが高く、リスク量が小さいものは利回りが低くなるので、それぞれの投資家が、自身の好みに合わせた選択すればいいでしょう。

アメリカでは金融引き締めによる景気の低迷→金融緩和への転換が予想されているため、期間の短い債券が、期間の長い債券の利回りを上回るいわゆる「逆イールド」という珍しい状態になっています。

今後長期金利が低下すると考えるなら、長期債を選んでおくべきでしょうし、今後の金利の低下幅は限定的と考えるなら、期間が短い債券を対象とするETFに投資をすればいいでしょう。残存期間が1年以内という短期債ETFや、20年超という超長期債ETFまで、様々な期間の選択肢があります。

もう1つの選択材料である発行体の信用力は、信用力が最も高い米国国債及び政府機関が発行する債券に投資するETFの利回りは低く、次いで投資適格の社債ETF、投資不適格格付の、いわゆるジャンク債ETFの順で分配金利回りが高くなります。また、発行体の信用力は高いものの、通常の債券よりも返済順位が劣る優先株式や劣後債を対象とする債券ETFもあり、通常の債券ETFよりも分配金利回りは高めです。

3. 予算別投資戦略

米国債券に投資できる主なETFを予算別に紹介します。数字4桁の証券コードが入ったETFは東証に上場する商品であり、日本の9:00~15:00に日本円での取引が可能です。アルファベットのTickerが入ったETFは、米国上場の海外ETFで、NY市場の取引時間中に取引可能です。

米国債は圧倒的な規模の投資対象であることからETFの商品数も多く、競争の厳しさを反映して管理費用も非常にリーズナブルな水準に設定されています。

東証にも20本近い米国債ETFが上場されていますが、これらの半分強は為替ヘッジ付の商品です。為替ヘッジのコストが高くなりがちなうえ、ヘッジにより円債券利回りと同等になり、投資の魅力が大きく削がれることから、為替ヘッジ付ETFはリストに入れておりません。

10,000円以下で投資可能なETFも色々あります。

例えば、東証に上場する1656や2838は、7-10年の米国国債を投資対象とする商品であり、米国債投資の王道的な商品と言えるでしょう。

同じ米国国債を投資対象とする商品でも、残存期間が短い債券を対象とする商品もあります。2620は、1-3年の米国国債を投資対象としており、JPSTはデュレーション(債券の残存期間)が1年内のごく短期の債券に対象を絞った商品です。こうした商品では、米国の中央銀行であるFRBの金融政策の影響をより強く受けることになります。

毛色が変わったところでは、優先株式を投資対象とするETFにも1万円以下で投資が可能です。この分野で有名なiSharesのPFFは、資産規模が2兆円に近い大型ETFで利回りは6%を超えています。

東証でも、Global X社が昨年米国優先証券ETF(2866)を上場しました。米国の銀行等が発行する優先株を主要投資対象とする商品で、2022年上場のため分配実績が1年ないものの、元となる米国ETFの分配利回りは5%を超えており、毎月の分配実績も5%を超える水準です。

リスト上の配当利回りは、ネット証券や運用会社HPに表示されたものを転記しただけですので、投資検討の際はご自身でご確認ください。また、1$=142円で円換算しています。

 ・10,000円以下で投資可能な主な米国債券ETF

証券コード

商品名

売買単位

信託報酬

8/4終値

最低投資金額

配当利回り

1656

iShares コア米国債 7-10年ETF

10

0.14%

278.2

2,782

1.79%

2620

iShares 米国債1-3年

10

0.14%

316.3

3,163

1.70%

2838

MAXIS米国国債7-10年

1

0.12%

7,819

7,819

1.48%

2866

GlobalX 米国優先証券ETF

1

0.255%

922

922

5%程度

JPST

JPMウルトラショートインカムETF

1

0.17%

$50.06

7,018

3.72%

IGSB

iShares 米ドル建社債1-5年ETF

1

0.05%

$50.20

7,128

2.84%

PFF

iShares 優先&インカム証券 ETF

1

0.46%

$30.68

4,356

6.88%

※売買単位:口数  
※信託報酬:税抜、年率  
※価格は円

25,000円の予算があれば、海外ETFの選択肢が大きく増加します。BNDやAGGは米国債ETFを代表する商品で、資産規模は日本円で12兆円を超える巨大ETFです。

S&P500連動ETFを全体の60%、BNDかAGGを全体の40%で組み合わせれば簡単に株式60/債券40のポートフォリオを作ることができます

さらに短期債を対象とするものに加え、20年超の超長期債を投資対象とする商品もあります。

債券の選択肢を拡げる意味では、政府系の住宅ローンであるMBSを投資対象とするETFや、社債を対象とするものがあり、これらのETFの利回りは、信用力の高い国債対象ETFよりも高めになりますので、リスク許容度が許すなら、面白い選択になり得ます。

・25,000円以下で投資可能な主な米国株ETF

証券コード

商品名

売買単位

信託報酬

7/24終値

最低投資金額

配当利回り

1486

S&P 米国債7-10年 上場Index Fund 米国債券

1

0.16%

22,105

22,105

2.96%

BSV

Vanguard米国短期債券 ETF

1

0.04%

$75.59

11,301

2.03%

AGG

iShares Core 米国総合債券市場 ETF

1

0.03%

$96.68

13,728

2.96%

BND

Vanguard 米国Total債券市場ETF

1

0.03%

$71.70

10,181

2.93%

IEF

iShares 米国国債7-10年 ETF

1

0.15%

$95.05

13,497

2.66%

MBB

iShares 米国MBS ETF

1

0.03%

$91.74

13,027

3.16%

SHV

iShares 米国短期国債 ETF

1

0.14%

$110.08

15,631

3.67%

TLT

iShares 米国国債20年超 ETF

1

0.15%

$96.53

13,707

3.28%

JNK

SPDR BBハイイールド債券ETF

1

0.40%

$91.57

13,002

6.61%

※売買単位:口数  
※信託報酬:税抜、年率  
※価格は円

・100,000円以下で投資可能な主な米国株ETF

証券コード

商品名

売買単位

信託報酬

7/24終値

最低投資金額

配当利回り

2647

NEXT FUNDS Bloomberg 米国国債7-10年

10

0.13%

5,245

52,450

1.60%

4. まとめ

今回は米国債券ETFを紹介しました。馴染みは薄いかもしれませんが、債券は値動きが安定的なため、投資初心者にとっても魅力的な投資対象だと思います。日本を除く先進国ではインフレ抑制のため中央銀行が積極的な金利引き締めを行った結果、債券の利回りが大きく上昇しました。

世界最大の債券市場である米国市場も例外ではなく、金融引き締めの最終局面が見えてきた現在の局面は、債券投資を検討するいい機会かもしれません。円高になった場合、円貨建てでの資金が減少するリスクはありますが、投資金額の抑制や、株式ETFなどと組み合わせることで、リスクをコントロールしながら投資にチャレンジしてはいかがでしょうか?

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