【決算ポイント】インフレ下に関わらず大幅増益を達成し1Qとして過去最高益を達成。

 

PPIHの株価情報

株価

(2022/11/9)

時価総額

自己資本比率

ROE

ROIC

2,435円

1.45兆円

29.4%

15.2%

5.7%

PER(実績)

PER(予想)

PBR

配当利回り

EV/EBITDA

23.43倍

25.51倍

 3.56倍

0.74%

14.1倍

PPIH:2023年6月期1Q決算結果

売上高4,737億円前期比6.3%増
営業利益   237億円 同48.4%増
四半期純利益184億円 同48.8%増

 

1Qとして過去最高業績を達成した好決算であった。インフレ下で調達コスト、光熱費等の販管費は前年同期比0.4%増加したが売上総利益は1.9%増加し、結果として大幅な営業利益増となった。営業利益率は1.4pt改善し5.0%となった。営業外収益で為替差益を56億円計上し経常利益は同74.2%増と大幅増益であった。前期1Qは営業減益と厳しかったが今期1Qは大幅増益と順調な進捗となった。

 

事業セグメント別の状況は以下の通りである。

【国内ディスカウント事業】

売上高2,880億円前期比6%増
営業利益131億円同2.1倍

 

既存店売上は103.3%で着地した。アウトドアやレジャー用品が伸長し、駅前、夜間の人流回復も寄与し(駅前店既存店売上:112.4%、夜間帯既存店売上:116.2%国内DS事業は大幅増益を達成した。粗利益率は中期経営計画における戦略施策であるPB/OEMが拡大(1Q構成比16.2%、前1Q比+2.9%)した事に加え外出需要カテゴリーやSNS商材の伸長もあり既存店粗利益率は+1.6%に改善した。PB/OEM強化や粗利向上に取り組むなかで滞留在庫の削減は引き続き進捗した。(既存店在庫は前1Q比▲238億円)販管費は水高熱費の高騰が続いているが、売上の伸長や販管費全体のコントロールにより前1Q比で販管費率は0.5%改善し金額ベースでも予算内で推移した。PB/OEMの商品開発は開発体制の強化によりトレンド対応力や開発スピードは向上した。SNS映えや若い世代のニーズと捉えたOEM商品が好調な売上を記録するとともにチューナーレスTVのように前期好調だった差別性の高い商品の拡充も迅速に進んでいる。店頭陳列に加えてメディアへの積極露出の強化により認知度やブランディングが向上した事が売上伸長に貢献している。

1Qの新規出店店舗は福岡県のドン・キホーテ宗像店と新潟県のドン・キホーテ・アピタ新潟亀田店であるが、それぞれ1Q予算比で112.0%、139.6%で推移した。

 

【GMS事業】

売上高 1,133億円前期比▲2.3%
営業利益38億円 同40.7%増

 

GMS事業は個店経営強化における課題が見え、1Qは粗利向上に注力した。既存店売上は外食代替需要の減少等で前1Q比97.5%着地もコロナ前の2019年比では同水準を維持した。総菜や冷食の強化により食品もインフレ時に選ばれる店を目指す。粗利率改善により営業利益は40%増と大幅に増加した。粗利率は前1Q比+2.0%の25.6%と改善した。DS事業を踏まえて強化したコスメや玩具の伸長や季節衣料品の値下げ抑制などが奏功した。販管費は人件費のスリム化も徐々に進捗し、前年並みかつ予算内の水準で着地した。(既存店販管費率+0.2%)個店経営強化のなかマーチャンダイジングの課題が1Qに明らかになった。9月からはDSとともにプライシング精度向上の取組を進めているが、10月からはDSのマーチャンダイジングとの統合を決定した。2Q以降も引き続き利益向上につなげる予定である。

 

【海外事業】

売上高 755億円前期比25.2%増
営業利益24億円同▲7.7%

 

インフレや各種コスト増の厳しい外部環境下でも前1Q並みの増収、営業利益水準と概ね予算通りの進捗であった。

アジア事業は店舗拡大により為替を除き+31億円であった。1Qは小売1店舗、鮮選寿司2店舗がオープンした。既存店粗利率はPB/OEM拡充に加えて円安効果が調達価格や物流費の増加を吸収し3.3%改善した。その結果営業利益は為替の影響を除き+2.5億円で着地した。

北米事業は高インフレ及び各種コストの上昇といった外部環境の急激な変化により売上、利益ともに伸長しづらい局面ながら1Qは概ね予算通りの進捗であった。粗利率は前1Q比+0.2%改善し販管費の増加を一部吸収した。その結果前1Q比の営業利益は既存事業が同水準、Gelson's は外食代替需要の減少により2019年比では改善も▲5億円で着地した。厳しい外部環境は一定期間続くと見込まれるため2Q以降はPB強化や各種機能統合(帳合、物流、間接部門)によるコストコントロールに取り組み利益率向上を図る予定でいるが、詳細は中間決算で発表する。

PPIH:2023年6月期予想

 2023年6月期の会社計画の業績予想は期初予想を維持した。
 

売上高1兆8,900億円 前期比3.2%増
営業利益940億円同6.0%増
当期純利益569億円同8.1%減
EPS95.42円
一株当たり年間配当金18.00円

上記予想の前提として国内は新店9店舗/業態転換4店舗、海外は新店12店舗出店予定である。既存店昨対はDS事業は100.3%、GMS事業は100.3%を予想している。売上総利益率は前期比1.2pt改善の30.9%を想定している。PB/OEM売上構成比目標はDSでは16.8%(+2.6pt)、GMSでは20.1%(+2.1pt)、 設備投資は750億円を予定している。
 

アナリストによる投資判断

 インフレ下ではあるが大幅増益を達成し、1Qとして過去最高益を更新した。DS事業の立て直し、増益達成の成功モデルを2Q以降は活かして国内GMS事業はDS事業とマーチャンダイジングを統合し、海外事業でもPB強化をする予定である。PPIHが小売業として最も優れている点は現場に権限を委譲し、どんな経済状況でもPDCAを確実に実行し個店毎の儲け力を伸ばせる事であると思っている。中期経営計画の2025年に売上高2兆円、営業利益1,200億円は高い確率で達成可能であるだろう。好決算だったが本日はPPIH株は3%近く下落しているが、これは一部投資家による利食いによるものだろう。予想PERが25.51倍、PBRが3.56倍、EV/EBITDAが14.1倍と成長株としては割安なバリュエーションである。

 

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執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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