執筆:西村 麻美

任天堂の株価情報


株価
(2022/5/18)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
59,110円 7.6兆円 77.7% 24.2% 19.1%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
14.6倍 20.4倍 3.4倍 N/A 9.1倍


2022年3月期通期決算

任天堂の2022年3月期通期決算の結果は

売上高1兆6,953億円(前年同期比3.6%減
営業利益5,927億円(同7.5%減
当期純利益4,776億円(同0.6%減
年間配当金2,030円

減収減益決算であった。半導体不足による部材コスト上昇の状況の中、円安の助けもあり当期利益の減益幅が3Q時点予想よりも縮小し前期比0.6%減で着地した。
為替の影響額は、売上段階で+785億円、営業利益段階で+430億円であった。また営業外収益として為替差益456億円計上した事等により営業減益幅に比べて当期純利益の減益幅は小さかった。
Nintendo Switchのハードウェアの累計販売台数が1億台を突破し、その普及基盤を活かして新作および定番タイトルが好調に推移した結果、売上高全体としては過去3番目に高い水準となった。
営業利益率は前年同期比1.4pt低下し、35.0%となった。期中の平均為替レートは、1USドル=112.34円、1ユーロ=130.50円だった。


決算発表と同時に株式分割を発表した。
2022年9月末を基準日とし、10月1日付で10分割する予定。
また自社株買いも発表し、翌11日に899,500株(取得総額5,069億円)を東証の自己株式立会外取引により買い付けを行った。


累計の売上総利益は売上高の減少により前年同期比2.5%減の9,460億円だった。
売上総利益率は、他のモデルと比べて利益率の低いNintendo Switch(有機ELモデル)がラインアップに加わり、また半導体不足による部材コストの上昇があったが、ゲーム専用機の売上高に占めるソフトウェア売上高の構成比が上昇したことや円安による為替の影響などにより、前期比0.6pt増の55.8%となった。


販管費は、研究開発費(前期比9.6%増)や広告宣伝費(同11.1%増)等の増加や、円安による為替の影響により、前期比7.1%増の3,532億円となった。
売上高に占める販管費の割合は、2.0pt増の20.8%となった。


売上高の内訳は

ゲーム専用機
(ハードウェア、ソフトウェア、アクセサリ)
1兆6,392億円(前期比3.6%減
モバイル・IP関連収入
(スマートデバイス向け課金収入、ロイヤルティ収入等)
533億円(同6.5%減
その他27億円(同55.9%増

地域別売上高比率は日本が21.2%、米大陸が43.5%、欧州が25.0%、その他地域が10.3%で、海外売上高比率は78.8%だった。
2022年3月期通期の主なソフトウェア、ハードウェアの商品の販売本数は以下の通りである。

●『ポケットモンスターダイヤモンド・シャイニングパール』1,465万本(2021年11月発売)
●『ポケモンレジェンズ アルセウス』1,264万本(2022年1月28日発売)
●『マリオカート8 デラックス』994万本
●『マリオパーティスーパースターズ』688万本 (2021年10月発売)
●2022年3月期のソフトウェア総売上本数 2億3,507万本(過去最大、前期比1.8%増)
●Nintendo Switch 1,356万台 (同33.3%減)
●Nintendo Switch Lite 370万台(同56.5%減)
●Nintendo Switch有機ELモデル 580万台 (2021年10月発売)
●ミリオンセラータイトルは39本(自社26本、他社13本)


世界的な半導体部品の不足や物流の遅れといった制約の中、Nintendo Switchの発売から5年経過したが、売上は過去2番目の水準となった。
2021年10月に発売したNintendo Switch 有機ELモデルも買い替えや買い増しの新しい需要を生み出している。


2023年3月期予想

2023年3月期の会社発表の業績予想は

売上高1兆6,000億円(前期比5.6%減
営業利益5,000億円(同15.6%減
当期純利益3,400億円(同28.8%減
年間配当金未定

前提為替レート:1USD=115円、1ユーロ=125円

Nintendo Switchハードウェアの通期の予想販売数量は、半導体不足による生産への影響などを考慮し前期比8.9%減の2,100万台とした。
Nintendo Switchソフトウェアは同10.7%減の2億1,000万本の販売を見込んでおり、ハードウェアの普及基盤を活かして、新作・定番タイトルの販売を伸ばす予定である。
営業利益は、主に製造原価や販管費の増加を見込んでいることにより、売上高と比較して減少幅が大きくなる予想。


アナリストによる投資スタンス

5月10日の決算発表翌日の11日に株価は自社株買いや株式分割等が評価されて上昇し、前日終値比3.2%高であった。
世界的な半導体不足、サプライチェーンの混乱の中底堅い決算結果であったが、今期に関しても会社予想より上に行くのではと感じる。
今期の業績予想に関してはソフトウェアの販売予想本数がやや保守的過ぎる印象があり、上方修正する確率は高いと考える。
現在の株価で予想PERが20.4倍、PBRが3.4倍、EV/EBITDAが9.1倍と割高感はない。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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