執筆:西村 麻美

カプコンの株価情報


【銘柄注目ポイント!】

五期連続最高益達成。旧作のデジタル販売も伸びており今期も最高益更新予定。

株価
(2022/5/23)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
3,550円 7,579億円 76.1% 22.6% 20.4%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
30.4倍 22.0倍 5.2倍 1.29% 12.2倍


2022年3月期通期決算

カプコンの2022年3月期通期決算結果は

売上高1,100億円(前期比15.5%増
営業利益429億円(同24.0%増
当期利益325億円(同30.6%増
EPS152.48円
一株当たり配当金46円

第4四半期単独の決算結果は

売上高219億円(前年同期比28%減
営業利益78億円(同23.5%減
四半期純利益58億円(同21%減

1Qに「バイオハザード ヴィレッジ」が発売された事から1Qの売上、営業利益が他四半期より極端に高かったが、通期で売上、利益共に過去最高を更新した決算だった。
2022年3月期で五期連続の最高益を達成した。
通期の営業利益率は2.7pt上昇の39.0%であった。
コンシューマー(パッケージ、デジタル販売)での販売本数増による増収増益であった。
4Q単独の決算に関して減収減益であったのは前年同期(2021年4Q)に「モンスターハンターライズ」が販売され売上、利益共に大きく上昇した事の反動である。


デジタルコンテンツ事業は

セグメント売上高875億円(前期比16.2%増
セグメント利益454億円(同22.6%増
セグメント利益率51.8%(前期49.1%増
年間販売本数3,260万本(前期比8.3%増

シリーズ最新作『バイオハザード ヴィレッジ』が全世界で610万本を販売したほか、「モンスターハンタ ー」シリーズのRPG作品『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~』も150万本を突破するなど順調に推移した。
また、前期に発売した『モンスターハンターライズ』(Nintendo Switch用)は、今年1月にパソコン向けに発売しユーザー層を拡大した。
また、2019年発売の『モンスターハンターワールド:アイスボーン』や2017年発売の『バイオハザード7 レジデント イービル』など、シリーズの過去タイトルが安定した人気に支えられ販売本数が伸長した。


アミューズメント施設事業は

セグメント売上高124億円(前期比25.7%増
セグメント利益6.5億円(同3.4倍
セグメント利益率5.3%(前期1.5%

2021年に緊急事態宣言発出から一部店舗において休業及び時短営業を余儀なくされたが解除後は来客数は回復した。
「プラサカプコン ミッテン府中店」(東京都)をオープンしたほか、地域最大級の複合遊戯施設「クレイジーバネット」を併設した「MIRAINO イオンモール白山店」(石川県)の合計2店舗を出店するとともに、1店舗を閉鎖した。その結果施設数は42店舗となった。


アミューズメント機器事業は

セグメント売上高57億円(前期比18.9%減
セグメント利益23億円(同2.5%減
セグメント利益率%(前期%増

『モンスターハンター: ワールド 黄金狩猟』および『パチスロデビル メイ クライ 5』が堅調に推移したほか、『百花繚乱 サムライガールズ』を投入した。
また、前期に投入した『バイオハザード7 レジデント イービル』は、市場での長期稼働を受けリピート販売が増加した。


その他事業は

セグメント売上高44億円(前期比43.4%増
セグメント利益15億円(同53.7%増
セグメント利益率34.7%(前期32.4%

タイトルのブランド価値向上に向け、Netflixで主力IPを活用したCGアニメが全世界で独占配信されたほか、映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』が世界各国で公開されるなど、主力IPを活用した映像化やキャラクターグッズ展開などに引き続き注力した。v eスポーツに関しては、グローバル規模でのユーザー層の裾野拡大に向け、「CAPCOM Pro Tour Online 2021」を世界19地域にオンラインで実施したほか、チームオーナー制を導入したリーグ戦「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2021」や、「ストリートファイターリーグ: Pro-US 2021」を実施した。


2023年3月期予想

2023年3月期通期の会社発表の業績予想は

売上高1,200億円(前期比9.0%増
営業利益480億円(同11.9%増
当期利益345億円(同5.9%増
EPS161.59円
一株当たり配当金46円

新作『モンスターハンターライズ:サンブレイク』を、2022年6月30日発売予定。
その他、新作大型タイトルを投入予定。
販売本数は過去最多を計画。
デジタル戦略のもと、リピート販売をグローバルで拡大する予定である。


決算発表の数日後に自社株買いを発表した。
公開買い付けにより、自己保有株を除く発行済株式総数の2.34%にあたる500万株の自社株買いを実施の予定である。
買い付け価格は1株当たり3,110円で、諸費用を含めた総額は155億8,300万円。取得期間は2022年5月16日から6月13日。


カプコンの連続増益に貢献しているのはバイオハザード・シリーズやモンスターハンター・シリーズ等の人気シリーズの過去作品をホリデーシーズンなどの時期を見極めて機動的に価格を変えて収益の最大化につなげてきた事が大きい。
旧作販売本数は、10年間で6倍に成長した。(22/3期:2,400万本 vs 12/3期:390万本)
PCプラットフォームを活用し、利益率の高いデジタル販売しているが年々売上本数が伸びている。
2022年3月期時点で過去作品は全販売本数の73.6%を占めており、この戦略が新作のみに頼らずに業績を伸ばす大きな下支えになっている。


アナリストによる投資スタンス

決算発表に関してはサプライズがなかった為に決算発表後に株価は大きく反応しなかったが、二日後に発表された自社株買いを評価して株価は上昇基調である。
バイオハザードのCGアニメのNetflixでの放映、映画公開等カプコンの認知は拡大しており、それが旧作販売の伸びにも繋がっており良いサイクルが出来上がっていると言えるだろう。
株価バリュエーションは予想PERが22.0倍、PBRが5.2倍、EV/EBITDAが12.2倍と割高感は全くない。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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