株価* | 時価総額 | 自己資本比率 | ROE | ROIC |
7,600円 | 10.9兆円 | 25.7% | 10.2% | N/A |
PER(実績) | PER(予想) | PBR | 配当利回り | EV/EBITDA |
9.7倍 | N/A | 0.96倍 | 0.58% | N/A |
*株価は2025/5/13の終値。
SBG:2025年3月期通期決算結果
売上高 | 7兆2,438億円 | 前期比7.2%増 |
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税引前損益 | 1兆7,047億円 | 同29.5倍増 |
親会社の所有者に帰属する当期純損益 | 1兆1,533億円 | 黒字転換(前期は▲2,276億円) |
4Q単独の決算結果は
売上高 | 1兆1,941億円 | 前年同期比10.6%増 |
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税引前損益 | 4,338億円 | 黒字転換(前年同期は▲2,063億円) |
親会社の所有者に帰属する四半期純損益 | 5,172億円 | 前年同期比123.8%増 |
ソフトバンクグループの2025年3月期通期決算は、4期ぶりの黒字決算であった。売上高は前期比7.2%増の7兆2,438億円、税引前損益は同29.5倍増の1兆7,047億円、親会社の所有者に帰属する当期純損益は黒字転換し1兆1,533億円となった。4Q単独の決算結果は売上高が前年同期比10.6%増の1兆1,941億円、税引前損益は黒字転換し4,338億円、親会社の所有者に帰属する四半期純損益は前年同期比123.8%増の5,172億円となった。
【投資利益】
持株会社投資事業の投資利益は3兆4,138億円と黒字転換した。(前期は▲4,590億円)アリババ株式に係る投資利益は1兆8,759億円、Tモバイル株式に係る投資利益は1兆3,522億円、ドイツテレコム株式に係る投資利益を4,342億円計上した。(アリババ株式に係る投資利益1兆8,759億円、ドイツテレコム株式に係る投資利益4,342億円は、アリババ株式を利用した先渡売買契約及びドイツテレコム株式を利用したカラー取引に係るデリバティブ関連損失2兆184億円で相殺した。)
SVF事業からの投資利益は3,876億円であった。SVF1ではByteDance等一部の投資先の公正価値が増加。活動開始来累計損益はSVF1で234億米ドルのプラス、SVF2で▲229億米ドル。
ただし、アームやSBKKなどの子会社は連結されるため、株式の公正価値の変動は連結損益計算書に計上していない。
【税引前利益】
税引前利益は前期比29.5倍増の1兆7,047億円となった。販管費3兆244億円、財務費用5,816億円。デリバティブ関連損失(投資損益を除く)2兆340億円:アリババ株式及びドイツテレコム株式の株価上昇に伴い、アリババの先渡売買契約、ドイツテレコムのカラー取引に係るデリバティブ関連損失を計上。SVFにおける外部投資家持分の増加額4,519億円:外部投資家持分の割合が大きいSVF1において投資利益1兆230億円(セグメント情報ベース)を計上したことに伴い、外部投資家持分の増加額4,028億円(成果分配型投資家帰属分)を計上した。
【純利益】
親会社の所有者に帰属する純利益は前期比1兆3,810億円改善の1兆1,533億円であった。法人所得税1,016億円、非支配持分に帰属する純利益4,498億円
【成長投資】
米国のAI研究開発企業であるOpenAIのためにAIインフラストラクチャーを構築する「Stargate Project」を発表。OpenAI Globalに最大400億米ドル(外部投資家へのシンジケーション予定額100億米ドルを差し引いた当社の実質的な出資予定額は最大300億米ドル)の追加出資を行うことをコミット。当期末以降の2025年4月15日、このうちファーストクロージングが完了し、100億米ドルの資金をOpenAI Globalに提供(うち、15億米ドルはシンジケーションにより外部投資家が、残りの85億米ドルはSVF2が出資)
米国の半導体設計企業であるAmpereの全持分を65億米ドルで取得し、100%子会社化することを決定。2025年後半に完了の見込み。
AIや機械学習に特化した半導体チップの設計・開発を手掛ける英国のGraphcoreを子会社化。
AIを活用したデータ学習型の自動運転プラットフォームを開発する英国のWayve Technologiesへ投資。
米国で太陽光発電所の建設および運営を手掛ける持分法適用関連会社のSBE Globalの持分を追加取得し、同社を子会社化。
【ファイナンス】
2024年4月に機関投資家向け普通社債1,000億円、同年6月および12月に個人投資家向け国内普通社債5,500億円、3,500億円をそれぞれ発行した。国内普通社債4,500億円を同年6月に満期償還した。2025年5月、個人投資家向け国内普通社債6,000億円を発行した。
2024年7月に米ドル建て普通社債9億米ドル、ユーロ建て普通社債9億ユーロをそれぞれ発行するとともに同年7月に米ドル建て普通社債7億6,700万米ドルとユーロ建て普通社債6億3,800万ユーロをそれぞれ期限前償還及び満期償還した。2025年1月に米ドル建て普通社債4億4,900万ドルを満期償還。
2024年9月にタームローンにより2,900百万米ドルの借り入れを実行した。2025年4月、OpenAI Global への追加出資に際し、外部投資家へのシンジケーション分を差し引いた85億米ドルの借入をブリッジローンにより実行。Ampere全持分の取得対価65億米ドルのブリッジローンも組成済。
2024年11月にハイブリッドローン1,350億円を借り入れ、同月に初回期限前返済日を迎えたハイブリッドローン840億円のリファイナンスを終了した。
2024年12月、アーム株式を利用したマージンローンについて、借入枠を85億米ドルから135億米ドルへ増額するなどの条件を変更。2025年3月期末時点で増額分の50億米ドルは未使用。
2025年2月、ソフトバンク株式を利用したマージンローンについて、従前の借入額5,000億円から8,000億円へのリファイナンスを完了。
2025年3月期通期の税引前利益の事業別概況
セグメント損益 | 前期比 | |
持株会社投資事業 | 7,943億円 | 黒字転換(前期は▲975億円) |
SVF事業 | ▲1,150億円 | 赤字転落(前期は1,282億円) |
ソフトバンク事業(SBGが40%保有) | 9,063億円 | 前期比8.5%増 |
アーム事業 | 477億円 | 黒字転換(前期は▲332億円) |
ソフトバンク事業はメディア・EC事業、コンシューマー事業及びエンタープライズ事業が引き続き増益となった事に加えてPayPay(株)及びPayPayカード(株)が黒字転換した事によりセグメント利益は増加した。モバイルサービス売上は契約数増により増収となった。
アーム事業は顧客のテクノロジー企業によるAI投資の増加を背景に過去最高の売上高となった。米ドルベースの売上高は前期比25.3%増。(円ベースでは同32%増)米ドルベースのロイヤルティー収入は、チップ当たりのロイヤルティー単価が高いアームの最新技術の採用拡大および複数市場でのシェア拡大により、前期比22.7%増加し過去最高を記録した。米ドルベースのライセンスおよびその他の収入は、主要なテクノロジー企業との間で締結した高額かつ長期のライセンス契約により、前期比28.5%増加し過去最高を記録。これらの契約により、アームの顧客は次世代スマートフォン、データセンター、ネットワーク機器、自動車、コンシューマー・エレクトロニクスおよびAIアプリケーション等、幅広い用途に向けたチップ開発が可能に。将来の成長に向けた研究開発投資の強化が利益の伸びを一部相殺するも、力強い増収がセグメント利益の改善に貢献した。
財務状況
SVFからの投資(FVTPL)の帳簿価額は11兆4,109億円、前期末比3,964億円増加した。SVF1は前期末比4,256億円増加した。米ドルベースでは33.5億米ドル増加した。投資の売却により24.9億米ドル減少した一方、2025年3月末に保有する投資先の公正価値増加により58.4億米ドル増加した。
SVF2は前期末比26億円減少した。米ドルベースでは3.2億米ドル増加した。2025年3月末に保有する投資先の公正価値減少により34.7億米ドル、投資の売却により20.3億米ドル減少した一方新規投資及び既存投資先への追加投資により58.3億米ドル増加した。
投資有価証券の帳簿価額は8兆401億円(前期末比1兆219億円減少)であった。アリババ株式の帳簿価額は1兆251億円(前期末比2兆7,320億円減少)、Tモバイル株式の帳簿価額は3兆4,041億円(前期末比1兆1,282億円増加)、ドイツテレコム株式の帳簿価額は1兆1,220億円(前期末比2,939億円増加)であった。
ソフトバンクグループ㈱の有利子負債が前期末比1兆1,7,983億円増加した。国内普通社債1兆円、外貨建普通社債9億米ドル及び、9億ユーロを発行した一方、国内普通社債4,500億円、外貨建普通社債12億1,600万米ドル、6億3,800万ユーロを償還した。タームローンにより29億米ドルの借入を実行。また、ハイブリッドローン1,350億円の借入実行により、ハイブリッドローン840億円のリファイナンスを完了した。
資金調達を行う100%子会社の有利子負債が前期末比3兆9,814億円減少した。アリババ株式を利用した先渡売買契約について、一部の現物決済に伴い決済時点において株式先渡契約金融負債3兆7,991億円(248.3億米ドル)の認識を中止した。Tモバイル株式を利用した先渡売買契約の全てを現金決済したことに伴い、株式先渡契約金融負債が4,322億円(28.5億米ドル)減少した。
資本合計で前期末比7,159億円増加した。親会社の所有者に帰属する純利益1兆1,533億円を計上し、利益剰余金が増加した。継続的な自社株買いを実施:2025年3月末までに2,370億円取得した。為替換算レートが前期末から円高となったことにより在外営業活動体の為替換算差額が5,213億円減少した。
親会社の所有者に帰属する持分比率(自己資本比率)は当期末25.7%(前期末は23.9%)となった。
SBG:2026年3月通期業績予想
SBGは業績予想は行なっていない。通信子会社のSBKKの2026年3月期業績予想は売上6兆7,000億円(前期比2.4%増)、営業利益は1兆円(同1.1%増)、当期純利益利益は5,400億円(同2.6%増)を予定している。
アナリストによる投資判断
Armアーキテクチャをベースにした高性能・省電力のサーバー向けプロセッサを開発のAmpere及びAI専用のプロセッサIPU(Intelligence Processing Unit)を開発する英国の半導体企業のGraphcoreの買収と戦略的な投資が目立った期であった。中長期的なポテンシャルを考えるとPBR1倍割れは割安過ぎであり、もっと評価されて然るべきだと考えている。