執筆:西村 麻美

 

【銘柄注目ポイント!】

広告単価下落、1ユーザー当たりの平均売上の減少で成長減速。

株価
(2022/5/9)
時価総額
(百万ドル)
自己資本比率ROEROIC
196.21USD5,310億USD75%29.07%26.45%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR配当利回りEV / EBITDA
15.8倍16.4倍4.6倍N/A10.26倍

旧社名Facebook、2021年10月に社名変更。傘下にFacebook、Instagram、WhatsApp、Messengerのアプリ事業とAV/VRを手掛けるReality Lab事業がある。

 

2022年1Q決算

Meta Platformsの2022年1Q決算結果は

総売上高279億800万ドル(前年同期比7%増、4Q21比17%減
営業利益85億2,400万ドル(同25%減、同32%減
四半期純利益74億6,500万ドル(同21%減、同27%減
希薄化後EPS2.72ドル(同18%減、同26%減

増収減益の決算だった。
売上高はアナリスト予想を下回ったが、EPSはアナリスト予想を上回った決算だった。
営業利益率は前年同期比12pt低下し31%となった。
売上高の伸びが一桁台になったのは2012年のIPO時以来10年ぶりであった。
1QのFacebookのデイリーアクティブユーザー数(DAU)は19億6,000万人で、前四半期の19億2,900万人から3,100万人増加した。
Facebookの1ユーザー当たりの平均売上(ARPU)は前年同期比では0.27ドル増だったが、前四半期比では2.03ドル減であった。
1Qに93.9億ドル相当の自社株買いを行った。

 

AR/VRを手掛ける部門のReality Labの損益は売上高が前年同期比30%増、前四半期比21%減の 6億9,500万ドル、営業損益は▲29億6,000万ドルだった。
(前年同期は▲18億2,700万ドル、4Q21は▲33億400万ドルだった。)

 

営業利益の大幅減少はFB、Instagram、WhatsApp等のアプリ事業からの営業利益が前年同期比13%減、前四半期比27%減の114億8,400万ドルだった事に加えてコストの大幅増によるものであった。
特に研究開発費はメタバース関連のAI等への投資の増加によるもので、前年同期比48%増、一般管理費は同45%増と大幅に増加した。

 

前四半期決算時に広告単価の下落について言及したが、1Qに既に平均広告単価が前年同期比8%低下した。
広告単価は低下したが、広告の表示回数は前年同期比15%増加した。
広告単価については2Q以降もロシア、ウクライナ戦争の影響でマクロ経済の環境は一層厳しくなっており、広告主の企業も広告予算を削減せざるを得ない状況にあり、またiPhoneやiPad上でのFacebook、Instagramの広告ターゲティング機能のユーザーによる拒否も合わせて更に下落するだろう。

 

2Qの業績のガイダンスであるが、総売上高は280億~300億ドルとしている。
また現況のドル高が継続すると仮定して売上に対する影響は▲3%と試算している。
税率については1Qの税率16%より高く、10%台後半になるだろうとコメントしている。

 

Metaの株価は年初から4月27日の決算発表前まで約半減したが、1Qの決算結果で一日当たりのアクティブ・ユーザー数が前四半期比増加した事、またEPSが市場予想を上回った事が評価されて決算発表後の時間外取引で19%と上昇し、翌日のマーケットでも前日比18%近く上昇した。
しかし、その後はインフレ懸念、中国での長引くロックダウンによるサプライチェーンの更なる悪化懸念から米国株全体が下げている。

 

営業利益率、修正EBITDAマージンの低下に表れているように昨年4月のAppleの広告規制以降Metaの利益率が低下している事は一目瞭然である。
昨年の3Q以降営業利益率は30%台に低下し、修正EBITDAマージンは昨年4Qまでは40%台を維持していたが、1Qの修正EBITDAマージンは30%台まで低下した。
一方新規事業のメタバースに注力するために設備投資額は増加しており、従業員数は増加の一途である。
昨年1Q末時点の従業員数は60,654人であったが、今年1Q末時点の従業員数は77,805人と28%増加した。
主力事業の利益成長が鈍化している一方設備投資、従業員は増加しており、新規事業の黒字化は長期間望めず、業績の先行きに明るい要素がないように思われる。

 

投資判断

1Qでは一日当たりのアクティブ・ユーザー数が増加した事が評価されたが、広告収入に頼る企業で広告単価下落、1ユーザー当たりの売上(ARPU)の減少は致命的な事である。
ザッカーバーグCEOは利益減に関して、AI等への適切な投資で広告の精度が改善し問題は解決するだろうとの楽観的なコメントをしているが、果たしてそうなるか疑問がある。
Facebook、InstagramではFacebook、Instagram内のみならず、アプリがインストールされた端末で外部の小売サイトでの購買履歴まで収集していたとモバイル・アナリストからの指摘があり、経営姿勢に倫理的な問題があると言わざるを得ない。
既に成長企業としてのバリュエーションではなく、前回の決算発表時の予想PER 20倍台前半か10倍台後半まで下落している。
主力の広告収入の成長が鈍化し、メタバース事業が利益を生むのはまだまだ先の事であり業績的には一層厳しくなると考えている。

 

MetaのKPI推移

(Meta Platforms社の決算資料に基づきクリプタクト社作成)

 

MetaのKPI推移

(Meta Platforms社の決算資料に基づきクリプタクト社作成)

 

Metaの業績予想

(Meta Platforms社の決算結果に基づきクリプタクト社作成)

 

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。 
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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サムネイル画像クレジット:AM NIKOM/Shutterstock.com