執筆:西村 麻美

ソニーの株価情報

株価
(2021/5/6)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
10,715円 13.49兆円 21.2% 24.2% N / A
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
11.43倍 20.12倍 2.38倍 N / A 14.3倍


2021年3月期通期決算

売上高8兆9,993億円(前年同期比9%増⤴
営業利益9,718億円(同15%増⤴
当期利益1兆1,717億円(同101.3%増⤴)
平均為替レート1USD=106.1円1EUR=123.7円

当期利益がほぼ倍増し最高益を更新した好決算であった。ゲームや金融が大きく利益を伸ばした一方イメージセンサーは不振であった。

セグメント別ではゲーム & ネットワークサービス分野は、売上高が前期比34%増の2兆6,563億円、営業利益が同43%増の3,422億円だった。2020年11月半ばに販売開始したPS5は2021年3月末までに全世界で780万台の出荷と従前予想の760万台を上回った。ハードウェアの他にゲームソフトウェアやネットワークサービスの増収も貢献し、このセグメントでの過去最高益を記録した。

音楽分野は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の大ヒットやストリーミング配信の好調などにより売上高は前期比11%増の9,399億円だった。営業利益は増収の影響に加え、事業譲渡による119億円の一時的利益を計上したことなどにより、同32%増の1,881億円だった。主に日本におけるモバイル向けゲームアプリやアニメを含む、映像メディア・プラットフォームからの利益貢献は、前期から大幅に増加し、当分野全体の営業利益の3割弱まで伸びた。

映画分野ではコロナの影響により劇場公開作品の大幅減により売上高が前期25%減の2,531億円だったが、マーケティング費用の大幅減により営業利益は同18%増の805億円だった。

エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野の売上高は前期比4%減の1兆9,207億円だった。営業利益は減収の影響はあったものの、モバイル・コミュニケーション(スマホ)を中心としたオペレーション費用の削減やテレビなどの製品ミックス改善により、同59.4%増の1,058億円となった。課題であったモバイル・コミュニケーションについては当初計画を上回る227億円の黒字を達成した。

イメージング&センシング・ソリューション分野は、主にモバイル機器向けイメージセンサーの販売減により、前期比5%減の1兆125億円となった。ファーウェイに対する規制の結果ハイエンドスマホ向けのセンサー出荷が減少した。営業利益は、研究開発費及び減価償却費の増加や、減収の影響などにより、前期比38%減の1,459億円となった。

金融分野の売上高は、ソニー生命において一時払保険料の減少はあったものの、特別勘定における運用益の増加などにより、前年度から28%と大幅増の1兆6,689億円となった。営業利益は介護事業での固定資産の減損計上はあったものの、主にソニー銀行での有価証券評価損益の改善や、ソニー損保での自動車保険損害率の低下により、前期比27%増の1,646億円となった。


2022年3月期予想

売上高9兆7,000億円(前年比8%増⤴
営業利益9,300億円(前年比4%減⤵
当期利益6,600億円(前年比44%減⤵

前提となる為替レートは1米ドル=107円前後、1ユーロ=126円前後を想定している。2020年度のゲームを中心とする好調さは継続するものの利益率などは下がると予想し、売上自体は8%のプラス成長を見込んでいる。PS5の販売台数は1,480万台を予想している。


アナリストによる投資スタンス

今期の当期利益が44%減と予想されている事が嫌気されて株価は下げ基調であるが、大幅な下落にはなっていない。バリュエーションは予想PERが20.12倍、PBRが2.38倍、EV/EBITDAが14.3倍とやや割安である。

一番のリスクはイメージセンサーであると考える。中国に対する諸外国からのプレッシャーは高まっており、ファーウェイに対する売上回復は望めない一方新規の大口顧客開拓にも至っていない状況との印象を受ける。

一方音楽分野でのストリーミングサービス、アニメ、モバイルゲームが伸びており、ゲームの好調の継続と金融の底堅さから会社予想ほどの減益にもならない可能性もあると考える。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美


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