執筆:西村 麻美

ソニーの株価情報


株価
(2021/10/29)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
13,115円 16.2兆円 24.7% 16.6% 11.4%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
13.8倍 22.27倍 2.3倍 N/A 11.5倍


2022年3月期第2四半期決算

ソニーの2022年3月期第2四半期決算の結果は

売上高2兆3,694億円(前年同期比13%増
営業利益3,185億円(同1%増
当期純利益2,131億円(同▲54%)

平均為替レートが1米ドル=110.1円、1ユーロ=129.8円

第2四半期の実績としては売上高、営業利益ともに過去最高を更新した。前年同期に繰延税⾦資産に対する評価減2,143億円の戻⼊れをした為に法人所得税の税率が前年同期の▲52%から24%となり、当期利益は前年同期比54%減の2,131億円となった。高級路線に回帰したエレクトロニクス事業の好調、ゲーム、音楽事業での月額定額サービス、ストリーミング配信が高い伸びを維持し、イメージセンサー事業は想定よりも底堅く推移した。

セグメント別ではゲーム & ネットワークサービス分野は、売上高が前年同期比27%増の6,454億円、営業利益が同21.5%減の827億円だった。為替の影響は売上高に207億円、営業利益に34億円のプラスの影響があった。PS5、ハードウェア、自社製作以外のゲームソフトウェアにより増収だったものの、PS5の製造コストを下回る戦略的な価格設定による損失、及びPS4の販売台数減などにより減益となった。しかし、このセグメントでの減益は従前から計画されていたもので、ハードウェア販売からの利益を多少犠牲にしてもPS5をプラットフォームとするコンテンツや月額定額サービス等のより利益率の高い商品に誘導する戦略であると思われる。プレイステーションユーザーの総ゲームプレイ時間は前年同期を17%下回ったが、その中で、アドオンコンテンツ売上が前年同期を上回ったことは、ユーザーエンゲージメントの質が⾼まったとソニーでは会社側はポジティブに捉えている。

音楽分野は売上高が前年同期比18%増の2,716億円、営業利益は海外での事業譲渡に伴う⼀時的な利益59億円があった前年同期からは37億円減の506億円となった。モバイル向けゲームアプリやアニメを含む映像メディア・プラットフォームからの利益貢献は、このセグメントの営業利益の20%台半ばとなっている。ストリーミング売上は、前年同期⽐で⾳楽制作が38%増、⾳楽出版が47%増と、引き続き高成長を維持している。ストリーミング市場の拡⼤が顕著な海外の⾳楽事業を束ねるSony Music Groupの今年度の営業利益は5年連続で過去最⾼を更新する見込みである。アーティストの発掘・育成を強化してきたことにより継続的にヒットを創出できており、⾳楽制作では2Qの実績としてSpotifyのグローバル楽曲ランキング上位100曲に、平均して38曲がランクインした。音楽分野の通期の⾒通しについては、売上⾼を前回から300億円増の1兆700億円に、営業利益を100億円増の2,000億円に、それぞれ上⽅修正した。

映画分野では売上高が前年同期比40%増の2,607億円、営業利益は同3.6%減の316億円だった。メディアネットワークはCrunchyroll買収、映画製作等による増収であったが、営業利益レベルでは公開作品の広告宣伝費の増加により減益となった。映画分野の通期の見通しは、売上⾼を前回から600億円増の1兆1,800億円に、営業利益を180億円増の1,080億円に、それぞれ上⽅修正した。⽶国を中⼼に⼤型作品の劇場公開が徐々に再開されており、今⽉公開した『Venom:Let There Be Carnage』は、公開後3⽇間での⽶国内での興⾏収⼊が約100億円とコロナ禍における最⼤のオープニング成績を記録した。今後も、『Ghostbusters: Afterlife』や『Spider-Man: No Way Home』など、強⼒なIP作品の劇場公開を予定している。

エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野の売上高は前年同期比9%増の5,819億円、営業利益は同36%増の727億円であった。このセグメントの営業利益率は同2.5pt改善の12.5%となった。スマートフォンの販売台数増や為替の影響で増収となり、製品ミックスの改善等で大幅増益となった。テレビについては、2Qにおいて製品価格は維持できているものの、今後パネル価格の急激な下落による製品市場価格への影響が表れると⾒込んでおり、市場の推移を⾒極めながら、在庫とマージンのコントロールに注⼒していく方針である。通期の見通しについては、売上高を前回見通しから600億円減の2兆2,800億円、営業利益を200億円増の1,900億円と修正した。

イメージング&センシング・ソリューション分野の売上高は前年同期比▲9%の2,783億円、営業利益は同▲2%の497億円だった。モバイル機器向けイメージセンサーは減収だったものの、デジカメ向けイメージセンサーの販売は増加した。モバイルセンサーについては、⾜元での軟調な中国スマホ市場や、半導体全般の需給逼迫、東南アジアでのスマホの完成品や部材の⽣産遅延などの影響はあるものの、為替の好影響とコスト・コントロールによりボトムラインでは大きく変わらない計画である。⼀⽅で、通期⾒通しを上⽅修正したAV・産業機器向けイメージセンサーは、デジタルカメラ市場の回復や⼯場の⾃動化ニーズの⾼まりなどを受け、想定を上回るペースで市場が拡⼤している。顧客基盤の拡⼤は着実に進捗しているが、来年度に向けては、数量の拡⼤と⾼付加価値化の実現に必要なロジックウェハーの確保が、⼤きな課題であり、切迫する需給状況は来年度も継続すると見ている。このセグメントの通期の見通しは、売上高は従前見通しから変更なしの1兆1,000億円、営業利益は100億円増の1,500億円に上方修正した。

金融分野の売上高は、前年同期ほぼ横ばいの3,684億円、営業利益は同16.5%増の431億円であった。増益はソニー生命の増益によるもので、変額保険等の市況の変動にともなう損益の改善、保有契約⾼の拡⼤にともなう保険料収⼊の増加等による。通期の見通しに関しては、売上高は900億円増の1兆4,900億円、営業利益見通しは従前見通しから変更なしの1,530億円とした。


2022年3月期予想

2022年3月期業績の会社予想は

売上高9兆9,000億円(前期比10%増
営業利益1兆400億円(同8.9%増
当期純利益7,300億円(同29.1%減

第2四半期の好決算を受けて通期の見通しを従前より売上高を2,000億円増、営業利益を600億円増、当期純利益を300億円上方修正した。前提となる為替レートは1米ドル=111円前後、1ユーロ=130円前後を想定している。


アナリストによる投資スタンス

昨日の好決算発表を受けて本日は株価が上昇し、年初来高値をつけた。決算結果に加えTSMCとの半導体事業、インド市場での成長戦略、アニメ事業の成長戦略、また、過去3期にわたり約1兆円を事業買収に使ったが、これらの投資が今期も含めて3期累計で1,800億円の営業キャッシュフローを生む予定であるとの説明などもあり、中長期の具体的な成長戦略が好感された印象を受ける。

株価バリュエーションは予想PERが22.27倍、PBRが2.3倍、EV/EBITDAが11.5倍と割安であり、長期投資の視点から最も魅力的な日本企業であるとの考えは変わっていない。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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