執筆:西村 麻美

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの株価情報


【銘柄注目ポイント!】

小売業界の唯一の勝ち組企業。ジャパン・ブランドの海外展開で高成長期待。


株価
(2021/8/19)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
2,047円 1.29兆円 30.6% 12.9% 7.4%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
24.16倍 22.54倍 3.10倍 0.81% 14.8倍


2021年6月期通期決算

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの2021年6月期通期決算の結果は

売上高1兆7,086億円(前年同期比1.6%増
営業利益813億円(同7.8%増
当期利益538億円(同7.9%増)

32期連続増収増益を達成した。コロナ禍の人流制限により国内ディスカウントの駅前店舗が苦戦したものの、郊外店舗、GMS事業、海外事業がカバーし、売上、営業利益、当期利益において過去最高を更新した。
営業利益率は前期比0.3pt改善の4.8%となった。

事業別の売上高とセグメント利益は

ディスカウントストア事業

売上高 セグメント利益
ディスカウントストア事業1兆1,835億円(前期比5.9%増)553億円(同18.4%増)
総合スーパー事業4,499億円(同8.5%減)166億円(同2.3%減)
テナント賃貸事業609億円(同4.6%増)134億円(同1.6%減)
その他事業141億円(同2.7%減)▲45億円(前期は▲24億円)

国内ディスカウント事業は、売上高は、インバウンド蒸発、人流の減少に伴う駅前店舗の不振の影響があったものの、新店と業態転換による増加がカバーし、ディスカウント全店では、前年を上回った。営業利益は、主力であるドン・キホーテの売上高が減少したことで、総利益、営業利益が減少。一方、UDリテールは業態転換が順調に進んだことに加え、既存店売上が前年比102.6%と成長したことで、営業利益は黒字に転じた。国内ディスカウントの郊外店舗は生鮮あり店舗は巣籠需要を取り込み、売上は前年比100.3%で着地した。一方生鮮なし店舗は既存店売上は前年比96.2%と苦戦した。

GMS事業の減収減益の理由は業態転換に伴い店舗数が減少した事によるものでファンダメンタルが悪化した訳ではない。既存店の通期売上前年比は102.6%、コロナ禍以前の2年前比でも103.4%と高い水準を維持した。個店経営の強化に向けてレジシステム、基幹システムの入れ替えにより個店でのプライシングが可能になった。また、個店仕入も強化し、店舗商圏に合わせた仕入を行うようになった。New GMSへのリニューアルを11店舗で実施したが、リニューアル実施店舗での平均売上高は123.4%、平均客数は119.6%と好調に推移している。

アジア事業は台湾、マレーシア、香港で5店出店の計8店舗を新規出店したために売上高は前期比140%増の501億円、営業損益は前期4億6,500万円の赤字から34億円の黒字に転換した。アジアでの店舗数は19店舗になった。日本の一次産品の供給を支える為にPan Pacific International Club(PPIC)というPPIH海外店舗へ輸出を希望する生産者、関係団体の組織で、現在会員数は300までに拡大した。このPPICの組織を利用して、取扱い品目の拡大、地域フェアを実施している。

北米事業についてはカリフォルニア州本拠地のプレミアムスーパーマーケットチェーンの「Gelson’s」を運営する持株会社のGRCY Holdings, Inc.の全株式を取得し子会社化し、27店舗が2021年4月から連結化した事により大幅増収増益となり、売上高は1,198億円、営業利益は81億円となった。


2022年6月期予想

2022年6月期の会社計画の業績は

売上高1兆8,700億円(前期比9.4%増
営業利益850億円(同4.5%増
当期利益576億円(同7.0%増)


アナリストによる投資スタンス

8月17日の決算発表の翌日から株価は下げ、本日(2021/8/19)年初来安値を更新した。この下落は逆に絶好の買い場であると考える。PPIHは日本の小売企業として圧倒的に競争力があり、積極的にアジアに出店して行く事で中長期の高い利益成長が望めるというストーリーは不変である。株価バリュエーションは予想PERが22.54倍、PBRが3.10倍、EV/EBITDAが14.8倍とやや割安になっている。


パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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