執筆:西村 麻美

任天堂の株価情報

株価
(2021/5/7)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
60,490円 7.2兆円 76.6% 28.1% 23.5%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
15.0倍 21.17倍 3.84倍 2.36% 11.8倍


2021年3月期通期決算

売上高1兆7,589億円(前年同期比34.4%増⤴
営業利益6,406億円(同81.8%増⤴
当期純利益4,803億円(同85.7%増⤴)

過去最高益を大幅更新の決算だった。売上段階の為替の影響が▲112億円あったものの、ソフトウェア、ハードウェア双方絶好調による大幅増収増益を達成した。営業利益率は前期比9.5pt改善し、36.4%となった。期中の平均為替レートは、1USドル=106.03円、1ユーロ=123.68円だった。2021年3月期の一株当たりの配当額は配当方針に基づくと2,020円になるが、それに一株当たり200円を特別に加算し、2,220円となった。

売上高の内訳はゲーム専用機(ハードウェア、ソフトウェア、アクセサリ)が1兆7,000億円(前期比35.6%増)、モバイル・IP関連収入(スマートデバイス向け課金収入、ロイヤルティ収入等)が570億円(同11.3%増)、その他が17億円(同41.9%減)だった。

地域別売上高比率は日本が22.6%、米大陸が41.6%、欧州が25.1%、その他地域が10.7%で、海外売上高比率は77.4%だった。


2021年3月期の主なソフトウェア、ハードウェアの商品の販売本数は以下の通りである。

・『あつまれ どうぶつの森』2,085万本(累計販売本数3,263万本)
・『マリオカート8 デラックス』1,062万本(累計販売本数3,539万本)
・『リングフィット アドベンチャー』738万本(累計販売本数1,011万本)
・『スーパーマリオ 3Dコレクション』901万本
・『スーパーマリオ 3Dワールド + フューリーワールド』559万本
・ミリオンセラータイトル(自社22本、他社14本)36タイトル
・Nintendo Switch 2,032万台 (2020年4月~2021年3月)
・Nintendo Switch Lite 851万台(上記期間)
・ハードウェアの販売台数は2,883万台(前期比37.1%増)
・ソフトウェアの販売本数は2億3,088万本(同36.8%増)

Nintendo Switchの2021年1月~3月期(第4四半期)の販売台数は、2020年3月20日に『あつまれ どうぶつの森』が発売されて過去最高だった前年同期を上回った。ソフトウェアについても、年明け以降もハード同様販売の勢いが継続した。Nintendo Switchはこの3⽉で発売から5年⽬に⼊ったが、売上の鈍化が感じられない状況である。2021年3⽉末時点でのNintendo Switchファミリー全体の世界累計販売台数は8,100万台であった。Nintendo Switchの長期に渡る強さは、『あつまれ どうぶつの森』などのソフトウェアの販売をきっかけに本体を購入したり、2台目を購入するケースが増えているとの会社側のコメントであった。


2022年3月期予想

2022年3月期の会社計画の業績予想は、

売上高1兆6,000億円(前年比9%減⤵
営業利益5,000億円(前年比22.0%減⤵
当期純利益3,400億円(前年比29.2%減⤵

前提となる為替レートは、1ドル105円、1ユーロ120円としている。年間配当金の予想額は上記予想を基にすると1,430円になる予定である。


今期第1四半期の主要新商品は以下の通りである。

・Nintendo Switch Liteに新色ブルーを5月21日に発売(合計5色展開)
・『ポケモンスナップ』の完全新作『Newポケモンスナップ』を4月30日に発売
・似顔絵キャラクター「Mii」を⾃由に配役して⾃分だけの冒険を楽しめる『ミートピア』をSwitch Lite新色発売日と同日の5月21日に発売
・ゲームを作る体験を通じて楽しみながらプログラミング的思考に触れる事ができるソフトウェア『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』を6月11日に発売
・「マリオゴルフ」シリーズの最新作として、『マリオゴルフ スーパーラッシュ』を6月25日に発売

今期の当期純利益減を見越して決算発表当日、翌日と株価は2%弱下落しているが、任天堂は常に保守的な業績予想を発表し、期中に上方修正というパターンが多い企業である。2021年第4四半期にSwitch、及びSwitch Liteの売上は過去最高売上だった前年同期を上回り、売上が減速していない事、また新たなソフトウェアの発売がSwitchやSwitch Liteの新規売上に結びつく好循環で出来ている事から、会社予想ほど弱い結果にはならないのではないかと考える。需要の鈍化よりも半導体不足による商品供給量の減少の方がリスクとして可能性が高いのではないかと推測している。

任天堂は任天堂IP(知的財産)に触れる人口を増やす様々な取り組みをしている。3月半ばにユニバーサル・スタジオ・ジャパンで『スーパー・ニンテンドー・ワールド』をグランド・オープンさせた。また、3⽉23⽇には、「歩くことを楽しくする」をテーマに、ピクミンを起⽤した新作スマートデバイス向けアプリの共同開発をNiantic社と⾏っていることを発表。アプリを通じて、ゲームとは異なる新しい分野での体験を届ける事を目的としている。本アプリは2021年後半にNiantic様を配信元として、グローバルに配信予定である。


アナリストによる投資スタンス

株価バリュエーションは予想PERが21.17倍、PBRが3.84倍、EV/EBITDAが11.8倍とやや割安である。現時点では今期第一四半期の新商品の販売動向について判断できる状況にはないが、会社予想より強めの業績に落ち着くのではと考えている。


任天堂に関する投資アイデア

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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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