執筆:西村 麻美

東京エレクトロンの株価情報

株価
(2021/5/6)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
48,410円 7.52兆円 71.1% 26.5% 24.3%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
31.16倍 22.82倍 7.44倍 2.19%


2021年3月期通期決算

売上高1兆3,991億円(前年同期比24.1%増
営業利益3,206億円(同35.1%増
当期利益2,429億円(同31.2%増)

会社予想を上回る好業績だった。SPE(半導体製造装置)およびFPD(フラットパネルディスプレイ)需要の拡大を受け、 売上高、売上総利益、営業利益が過去最高を更新した。売上総利益率は前期比0.3pt上昇の40.4%、営業利益率は同1.9%上昇の22.9%だった。成長投資を継続しており、研究開発費は過去最高に達した。

セグメント別では、SPEは情報通信技術の用途の拡がりによって、ロジック/ファウンドリ向け半導体に対する設備投資は、最先端から成熟世代まで、広い範囲での投資が堅調に推移した。

また、データ社会への移行を背景に、NANDフラッシュメモリ向け設備投資は大きく増加した。また、調整されていたDRAM向け設備投資は、年度後半にかけて需給バランスの改善により回復に転じた。その結果、セグメント売上高は、1兆3,152億円(前期比24.0%増)、セグメント利益は3,625億円(同34.0%増)となった。セグメント利益率は前期比2.1pt上昇の27.6%となった。

FPDはテレビ用大型液晶パネル向けの設備投資は堅調に推移し、モバイル用中小型有機ELパネル向けの設備投資も増加したことで、FPD製造装置市場は前年度比でプラス成長となった。このような状況下、セグメント売上高は、837億円(前期比26.8%増)、セグメント利益は88億円(同16.2%減)となった。セグメント利益率は前期比5.5pt低下の10.5%となった。

SPEのアプリケーション別売上構成比は、メモリでは、先端世代における生産能力増強に向けた積極的な投資を背景に、DRAM・不揮発性メモリ向けともに売上が大きく伸長した。ロジック/ファウンドリにおいても、最先端世代向けに加え、14nmから成熟世代にかけた幅広い世代への投資が継続した。

SPEの製品別売上構成比は、不揮発性メモリ向け投資の拡大を背景に、エッチングおよび成膜装置の売上構成比が増加した。

事業環境に関しては、2021年4月時点において半導体前工程製造装置(WFE)の設備投資は5Gモバイルの普及とデータセンター投資に牽引され、旺盛なロジック/ファウンドリ投資に加え、メモリ投資も加速すると会社側は見ており、CY2021は前年比3割程度の成長を見込んでいる。

FPD製造装置 TFTアレイ工程向け設備投資に関しては、モバイル向けOLED投資は前年比で増加も、大型パネル向けLCD投資は一巡。今後、OLED投資に牽引され市場の成長が期待できるが、CY2021は大型パネル向け投資がLCDからOLEDに移行する端境期として、前年比3割程度の減少を会社側は見込んでいる。


2022年3月期予想

売上高1兆7,000億円(前年比21.5%増
営業利益4,420億円(前年比37.8%増
当期利益3,300億円(前年比35.8%増

SPEとFPDの売上高の内訳はSPEが1兆6430億円、FPDが570億円を予定している。ロジック/ファウンドリおよびDRAM向けの高い需要により大幅に最高益を更新すると見ている。

アプリケーション別ではロジック/ファウンドリ向けは、情報通信技術の推進に伴うアプリケーションの拡大により、積極的な投資が一層進み、市場成長を牽引すると見ており、売上は前期比30%程度増加すると考えている。この分野での事業機会は難易度の高まるパターニングでのビジネスを拡大したい方針である。DRAMは、5Gモバイル、 PC、データセンターの需要の増加により需給が逼迫しており、高水準の投資を見込んでおり、売上は前期比45%程度増加と見ている。この分野での事業機会は微細化に向けた新たな技術、新たな材料への対応と考えている。

研究開発、設備投資は拡大する市場と多様化する最新技術ニーズを見据えて加速する計画である。研究開発費は前期比17%増の1600億円、設備投資は同19%増の640億円、減価償却費は同27%増の430億円を予定している。

1株当たりの配当金は、配当性向50%に沿って1,061円を予定している。

3月上旬に東京エレクトロン社長の河合氏はダイヤモンドオンラインのインタビューでコメントをしているが、2021年の半導体前工程製造装置の世界市場(WFE)が過去最大規模の20%増に迫ると強気の見通しを年初と変わらず持っており、2月に米アプライド・マテリアルズもWFEの成長が20%増と発表し河合氏の見方に追随した。

ICTの市場でロジック半導体の需要は盛んだが、今はさらに旺盛で、メモリー半導体のDRAMは、一時在庫が増えたが、その後は順調に在庫がなくなって足元ではDRAMの在庫が足りなくなってきており、今年はその分の設備投資が広がると考えていると述べた。この強気の見方の背景にあるのが、5Gの普及、PCの需要とGAFAM(グーグル、アップル、アマゾン・ドットコム、フェイスブック、マイクロソフト)に代表される、巨大データセンターを運営するクラウド企業)も含めデータセンターの投資が昨年から今年にかけて大幅に増加していると指摘した。


アナリストによる投資スタンス

株価バリュエーションは予想PERが22.82倍、PBRが7.44倍、EV/EBITDAが15.5倍とPERベースでは割安である。今期も半導体需要が拡大し続ける事、また次世代半導体のEUV向けコータ/デベロッパの量産機においてシェア100%を有している事を考えると割安であると考える。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美


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