執筆:西村 麻美

ニトリの株価情報

株価
(2021/04/01)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
20,525円 2.3兆円 69.3% 15.3% 14.2%
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
25.12倍 23.49倍 3.61倍 0.68% 13.8倍


2021年2月期通期決算

ニトリの2021年2月期の通期決算結果
売上高7,169億円(前年比11.6%増⤴
営業利益1,376億円(同同28.1%増⤴
当期利益921億円(同29.0%増⤴

巣ごもり消費やこれまでより多くの時間を自宅で過ごす新しい生活様式の定着により、家具・ホームファッション商品ともに好調に推移し、34期連続の増収増益となった。既存店の前年比推移は、売上高前年比は110.4、客数は112.8、客単価は97.9だった。

特に増収増益に大きく貢献したのはEC事業であった。通販WEBサイト限定の商品や色・サイズを展開したほか、「おうち時間」や「快適ワークスペース」の特集を通販WEBサイトに掲載する等、顧客のニーズに合わせたサービスの強化に努めたことで売上が大きく伸長し、当EC事業売上高は前期比59.2%増の705億円となった。アプリ会員数は2021年2月期に908万人を達成した。

連結売上高の内訳は海外店を含む店舗売上は前期比108.6%の6,238億円、通販売上は同159.2%の705億円、法人&リフォーム売上は同90.4%の93億円、賃貸収入が同100.5%の74億円、その他が同103.5%の57億円だった。

原価低減の取り組みとして、原材料の統一、海外サプライヤーとの共同による生産工程の改善等に継続して取り組んだことで売上総利益率は前期に比べて2.27ppt改善し、57.44%となった。

販管費については、珪藻土商品の自主回収に伴う費用の増加のほか、EC事業の売上増により商品発送作業に関連する業務委託費が増加したものの、緊急事態宣言期間中の店舗の臨時休業や営業時間の短縮及び出張自粛等に賃借料や旅費交通費の割合が減少し、前期に比べて販管費率は0.21pp低下した。その結果、営業利益率は前期に比べて2.47ppt上がり19.20%となった。

ニトリが注視している主要KPIの22項目のうち21項目はクリアし、1項目のみ未達だった。

国内の出店状況は、2021年2月期にニトリ店舗は32店舗増加し573店舗となり、アパレル店舗は13店増加の17店舗となった。海外は台湾で5店舗を増加の35店舗、米国2店舗、中国34店舗と合わせて71店舗となり、国内・海外の合計店舗数は661店舗となった。また、買収した島忠の店舗61店舗も合わせると722店舗となった。


2022年2月期予想

2022年2月期通期決算の会社計画は

売上高8,736億円(前年比21.9%増⤴
営業利益1,439億円(同4.5%増⤴
当期利益986億円(同7.0%増⤴

ニトリの2022年2月期の重点課題は成長を再加速する事である。日本国内の寡占化を進める為にニトリ、デコホームで80店出店の予定である。また、アプリ会員数を1,300万人まで増やす予定である。海外に関しては、中国で14店出店、台湾で7店出店、米国では1店出店し、東南アジアで2店出店の予定である。

買収した島忠の分だけ売上高は増えるが、島忠の家具部門は赤字のために統合により営業利益率は3ppt低下する見込みである。また、国内外の積極出店、また物流施設の拡充のために設備投資が増加するために利益増加率は一桁台に低下する見込みである。

決算発表翌日の4月1日は、ニトリの株価は4.2%下落した。2022年2月期は積極出店のために利益増加率が一桁台に低下する事から嫌気された印象があるが、成長の再加速のための準備の期になると思われる。


アナリストによる投資スタンス

株価バリュエーションは予想PERが23.49倍、PBRが3.61倍、EV/EBITDAが13.8倍、PSRが2.5倍と割安になっている。EC事業比率はまだ十分に成長する余地があり、アプリ会員増からの顧客囲い込み戦略は上手く行っている。島忠の利益率改善には時間がかかると思うが、5年で利益率2倍を目標にしている。
国内のみならず、海外でもアジアを中心とした成長路線は変わらないために寧ろ株価が軟調な時は買い場に思われる。


ニトリに関する投資アイデア

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プロフィール

株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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