執筆:西村 麻美

ソフトバンクグループの株価情報

株価
(2021/8/11)
時価総額 自己資本比率 ROE ROIC
6,723円 13兆円 19.5% N/A N/A
PER
(実績)
PER
(予想)
PBR 配当利回り EV / EBITDA
2.75倍 N/A 1.07倍 0.65% N/A


2022年3月期第1四半期決算

ソフトバンクグループ(SBG)の2022年3月期第1四半期決算結果は

売上高1兆4,791億円(前年同期比15.6%増
税引前利益1兆2,924億円(同55%増
四半期純利益7,615億円(同39.4%減)

増収減益の決算結果だった。前年同期がTモバイル、スプリント関係の利益が莫大だった反動で四半期純利益は前年同期比約40%減となった。

投資利益は計1兆2,631億円を計上した。持株会社投資事業からの投資利益は7,415億円だった。T モバイル株式に係る未実現評価益2,285 億円、条件付対価の公正価値上昇に伴うデリバティブ関連利益 1,978 億円、上場株式等への投資による投資利益 2,103 億円を計上した。

SVF1およびSVF2等からの投資利益は2,879億円だった。SVF1では、上場投資先(DoorDash、Uber、Guardant Health など6社)の一部株式の売却により投資の実現益(純額)3,097 億円を計上した。上場投資先で合計 1,989 億円の未実現評価益(純額)を計上(6社で合計 8,994 億円の利益計上の一方、Coupang など9社で合計 7,005 億円の損失)したほか、未上場投資先で合計 973 億円の未実現評価益(純額)を計上した。

SVF2では、KE Holdings の一部株式を売却したことにより投資の実現益 970 億円および未実現評価益(純額)491 億円を計上した。

ラテンアメリカ・ファンド事業からの投資利益は2,194 億円だった。上場投資先である Banco Inter S.A.の株価の上昇や QUINTOANDAR, LTD.、VTEX などの非上場株式の公正価値が上昇したことにより投資の公正価値上昇により未実現評価益(純額)を計上した。

投資活動の状況は、SVF1は投資先の上場や資金化が進んだ。第1四半期に21億米ドル(約2,310億円)の投資を実施した。SVF1のポートフォリオは第1四半期末時点で 82 銘柄に投資。このうち当第1四半期に4社が上場したことにより、上場投資先は15 社になった。投資の一部売却による手取金を基に分配を実施した。(SBGは 15億米ドル、約1,650億円を受領した。)

SVF2は積極的な新規投資を実施した。第1四半期に47銘柄への新規投資および既存投資先への追加投資で合計135億米ドル(約1兆4,850億円)の投資を実施し、累計投資額は202億米ドル(約2兆2,220億円)となった。出資コミットメントを400億米ドル(約4兆4,000億円)に増額した。SVF2のポートフォリオは第1四半期末時点で91 銘柄に投資。このうち当第1四半期に4社が上場したことにより、上場投資先は7社となった。上場株式の一部売却や資金化による手取金を基に分配を実施した。(SBGは21億米ドル、約2,310億円を受領した。)

ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドでは第1四半期に10銘柄への新規投資および既存投資先への追加投資で合計8億米ドル(約880億円)の投資を実施した。第1四半期末時点で48銘柄(SBGの子会社として会計処理される投資先1件を含む)に投資した。

ソフトバンク事業についてはコンシューマ向け事業が減益となったものの、主に法人向け事業の増益とLINE子会社化のプラス影響がこれを補い、セグメント利益は前年同期比4.5%増の2,709億円となった。

税引前利益は前年同期比4,584億円増加の1兆2,925億円だった。財務費用は828億円、デリバティブ関連損失(投資損益を除く)は1,115億円だった。

親会社所有者に帰属する純利益は前年同期比 4,942 億円減少の7,615億円だった。前年同期は Sprint 支配喪失に伴う利益など非継続事業からの純利益 7,345 億円を計上した。

第1四半期は. 負債返済および新規投資による資金需要に対応するため、財務規律を遵守しながら機動的な資金調達を実行した。国内ハイブリッド社債 4,050 億円を発行したほか、アリババ株式を活用した先渡売買契約により 30.0 億米ドル(約3,300億円)、アリババ株式を活用した借入れ(マージン・ローン)により 18.8 億米ドル(2,068億円)を調達した。その後、2021 年7月には外貨建て普通社債 38.5 億米ドル(約4,235億円)および 29.5 億ユーロ(約3,835億円)を発行した。


2022年3月期予想

2022年3月期通期の業績予想を会社側は発表していない。通信子会社のSBKKの2022年3月期業績予想は売上5兆5,000億円(前期比5.7%増)、営業利益9,750億円(同0.4%増)、当期利益5,000億円(同1.8%増)である。Zホールディングスの2022年3月期予想は売上1兆5,200~1兆5,700億円(同26.1~30.2%増)、調整後EBITDA3,030~3,130億円(同2.8~6.2%増)と発表した。ZホールディングスはFintech領域からの高い収益の伸びを見込んでいる。


アナリストによる投資スタンス

昨日の決算発表後、本日(2021/8/11)は株価は2%弱下落し、年初来安値を更新した。中国企業へのエクスポージャーの高さ(全投資先の約23%)が嫌気されて売られているようである。SBGは投資会社であるために業績は市場に連動するために現時点で今期の業績を予想する事は大変難しいが、現在の株価でPBRが1.07倍と割安である。


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プロフィール

西村麻実 / MamiNishimura
株式会社クリプタクト
マーケットアナリスト 西村 麻美

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。


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