拡大する産業用ロボット市場

製造業の人手不足は、少子高齢化が続く日本において、深刻な状況になっている。厚生労働省の「2022年版ものづくり白書」で公表されたデータによると、製造業の就業者数は約20年間で157万人も減少した。製造業における34歳以下の若年就業者数は、過去20年間で121万人も減少した。東京商工リサーチによると2023年1ー2月の「人手不足」関連倒産は合計21件(前年同期比162.5%増)で、前年同期の2.6倍に急増した。

労働人口減少による人手不足の状況は先進国共通の課題であり新興国では人件費の高騰や品質向上を背景に製造工程の自動化が急務になり、産業用ロボットのシェアが拡大している。米市場調査会社のReport Oceanの調査によると2021年の産業用ロボットの世界市場規模は423億4,530万ドル(約5兆6,735億円)であった。産業用ロボットの世界市場規模は、2022年から2030年までの予測期間においてCAGR(年平均成長率)11.8%で推移し、2030年には1,168億4,870万ドル(約15兆6,579億円)に達すると予測されると2022年2月に発表した。

 

 

世界の産業用ロボット出荷数と予測

International Federation of Robotics(IFR)は2025年までの全世界での産業用ロボット出荷台数予測を発表している。2019年、2020年はCovid-19により減速したが2021年は大幅に増加し、以降は穏やかに2025年まで成長し続けると予測している。

 

          (出所:International Federation of Robotic, World Robotics 2022)

 

 

産業用ロボットの国別市場ランキング

2021年時点での市場を国別ランキングで表した場合、中国に次いで日本が2位、4位に韓国がランクインするなど、アジア圏で市場のトップ4を占めており、アジアが世界で最大の市場と言える。さらに、新興国への産業用ロボットの導入など、今後もアジアが中心の市場が展開されていくと思われる。

 

  (出所:International Federation of Robotic, World Robotics 2022)

 

産業用ロボットの利用業種

IFRの「World Robotics 2022」によると産業用ロボットの利用業種の内訳はエレクトロニクス業界が26%、自動車業界が23%、金属・機械業界が12%、プラスチック・化学業界が5%、食品・飲料業界が3%であった。

 

日本における産業用ロボットの歴史

日本における産業用ロボットの歴史は1960年代に遡る。産業用ロボットの開発を専門とするベンチャー企業、ユニメーション(Unimation Inc.)が1961年に米国で設立。翌1962年に世界初の産業用ロボット「ユニメート(Unimate)」の試作が完成した。1968年にユニメーションは川崎航空機工業(川崎重工業の前身)と提携し、川崎ユニメートという合弁会社を設立し、1969年に日本初の国産産業用ロボットを発表した。現在産業用ロボットの世界シェア一位のファナックは1960年代はNC(数値制御装置)が中心で、ロボット事業に参入したのは1970年代に入ってからである。

早稲田大学では人型サービスロボットの分野の実験を1960年代に重ね、1972年に世界初となる全身型の人型ロボット「Wabot-1」を完成させた。1980年には山梨大学の牧野洋教授が発明したSCARA(Selective Compliance Articulated Robot Arm、水平多関節)ロボットを発表した。SCARAロボットは日本のイノベーションを体現したものであり、自動組立作業に適しており、動作が速く、安価に製造できることが強味であった。この頃に油圧式ロボットから電動ロボットへの切り替えが起こり、DCサーボモーターからACサーボモーターへの移行、マイクロプロセッサーの進歩等によりより高い精度が実現された。技術力の向上、また自動車産業の成長と共に日本のロボットメーカーは1980年代に事業を拡大した。1990年代初頭の日本経済のバブル崩壊により製造業は設備投資を控えるようになり、産業用ロボットに関しては人にはできないような作業ができるロボットの導入が行われるようになり専用化されたロボットの開発が進み、技術が進化した。

1990年代には世界のロボット販売台数の90%を日本のロボットメーカーが占めるまでになっていた。この時期、日本国内の半導体産業は相対的に衰退しつつあったが、世界の半導体産業の成長が日本のロボット産業に恩恵をもたらす形となった。産業用ロボットの需要に関しては、2000年代初頭に奇跡の経済成長を遂げた中国に重心がシフトした。現在、産業用ロボットの需要の多くは中国からのものである。IFRによると2021年時点で日本のロボットメーカーは世界のロボット製造の45%を占め世界一のロボット生産国の地位を維持したが1990年代のシェアの半分まで低下し競争が激化している。

 

中国の台頭

上記のデータでも明らかなように中国は世界最大のロボット市場である。しかし中国国内ブランドの技術力が弱い事が課題であった。2015年に「中国製造2025」の重点領域としてロボットが取り上げられたことから、2015~2018年に政府ではロボットに関する政策の発表、企業ではロボット産業への新規参入、投資・買収が活発化した。

2015年にハルビン工業大学ロボット集団の子会社としてEduBot設立。ロボット教育設備の製作・販売等のロボット教育に特化した会社である。 EduBotが国家資格「産業用ロボット応用エンジニア」の発行を始めた。EduBotは2016年にABB、KUKA等主要メーカーと提携し各社のロボット教材を作成し、エンジニアの育成を開始した。EduBotは各地の専門学校と提携し3万人近くを教育してきた。

産業ロボットの四強メーカーの一社であるドイツのKUKAは2016年に中国の家電メーカー美的集団(ミデア)に買収された。この他に2015年から2019年までに12社の中国企業が海外の産業ロボットメーカーを買収した。

 

日本のロボット政策

中国の官民一体の取組による産業ロボット分野での台頭に日本政府は危機感を持っている。産業用ロボットにおける重要技術で世界をリードし続けていくことを目指し、産学連携の研究体制を構築し、研究開発を実施する必要があるとし、経済産業省は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じ関連する事業を支援している。

日本政府のロボット政策の基本的な考え方はロボットの日本国内での社会実装を推進する事が最重要課題である。導入が進まない中小企業等に対する取り組みを抜本的に強化するために自治体、金融機関等の地域との連携の促進、産学連携の人材の育成等に取り組んでいる。また、産業ロボットの世界三位のシェアを持つスイスの重電メーカーのABBでは、自社の他セグメントの知見等を活用しシステムインテグレータ(SI)事業を展開し、ロボット事業について、製造からライン構築までのバリューチェーンを構築している。日本においてもロボットSIerの育成が必要であるとし、2018年に「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」を設立した。

 

産業ロボットの世界ランキング

産業ロボットメーカーの世界ランキングは様々なデータがあるが、業界の世界規模の団体であるIFRが信用度が高いと思われるのでここではIFRのランキングを使う。2020年末のランキングは以下の通りである。産業用ロボット「世界4強」は、ファナック、安川電機、ABB、KUKAであると言われている。

 

1. ファナック(日本)23%

2. 安川電機(日本)12%

3. ABB(スイス)10%

4. KUKA(中国/ドイツ)7%

5. Stäubli (スイス)4%

6. カワサキロボットサービス(日本)4%

7. セイコーエプソン(日本)4%

8. 不二越(日本)3%

9. Universal Robots(デンマーク)3%

10. Comau(イタリア)3%

 

産業ロボットの関連銘柄

ここからは産業ロボット関連の上場日本企業について紹介する。

①ファナック(6954)

ファナックの株価情報

会社概要:1972年富士通よりNC(数値制御装置)部門が分離設立。1976年東証二部上場。1983年に東証一部に市場変更。産業用ロボット、工作機械用NC(数値制御装置)、ロボマシンのカテゴリ―の小型切削加工機(ロボドリル)で世界首位である。社名のFANUCはFuji Automatic NUmerical Controlの頭字語である。研究開発に注力しており、全従業員の約3分の1を研究員が占めている。特許に関しては米国、ドイツ、中国を中心とする特定3カ国の外国出願から国際出願に切り替えを行い、グローバルな権利化を進めている。

 

2022年3月期通期の製品及びサービス毎の売上の内訳は以下の通りである。

 

部門名売上高(億円)%比率
FA2,26230.9%
ロボット2,68536.6%
ロボマシン1,44619.7%
サービス93712.8%
合計7,330100%

 

また、地域別売上の内訳は以下の通りである。

 

地域名売上高(億円)%比率
国内1,11115.2%
米州1,49720.4%
欧州1,20816.5%
中国2,28131.1%
アジア(中国以外)1,17916.1%
その他540.7%
合計7,330100%

 

ビジネスモデル:ファナックはCNC(コンピューター数値制御システム)を基本商品とし、その応用商品として「ロボット」および「ロボマシン(小型切削加工機、電動射出成型機、ワイヤ放電加工機)」を開発・製造・販売している。「工場の自動化」を得意分野と位置付け、そこに特化した事業を展開している。FAは工作機械メーカーにユニットとして納め、これを組み込んだ工作機械をエンドユーザーが導入する形である。ロボット及びロボマシンはエンドユーザーの生産設備として直接導入される。エンドユーザーは8割から9割が海外で自動車関連業界の割合が高いが一般産業からの需要も増加している。生産面の大きな特色として各商品とも国内工場でほぼ全て生産している。標準化した商品を国内で集中生産することで品質の維持と生産ラインの高効率化・自動化を実現している。

高い収益性の確保:設計段階における利益確保を重視している。可能な限り標準化や共通化、モジュール化を図り、より安価な部品を使えるような設計、自動化生産による効率化を意識した設計を行う等の施策をしている。過去最高益を記録した2015年3月期通期には営業利益率40.8%と最高を記録した。2022年3月期通期の営業利益率は25.0%であった。

 

株価(2023/3/27)時価総額自己資本比率ROEROIC
22,990円4兆3,842億円85.9%9.8%8.1%
実績PER予想PERPBREV/EBITDA配当利回り
28.4倍26.8倍2.8倍16.3倍N/A*

                                          *期末配当金の金額が未定のために配当利回りはN/A。

②安川電機(6506)

安川電機の株価情報

会社概要:1915年創業。1945年東証、福証上場。独自制御技術でサーボモーターとインバーターが世界首位。産業用ロボットはIFRのランキングによると世界二位。炭坑用電機品の受注から始まりモーターとその応用を事業領域に定め社会インフラを支える技術・製品を開発してきた。産業の高度化、社会課題の解決を支えるのが安川電機の「モーションコントロール(サーボモータ、インバータ)」「産業用ロボット」「システムエンジニアリング」などの事業である。

事業の概要

1)モーションコントロール事業

ACサーボ・コントローラ製品は電子部品や半導体部品などの高い精度が求められる生産機器に組み込まれている。インバータは大型空調やエスカレーター・エレベーターなどの社会インフラで使われ、省エネに貢献している。

2)ロボット事業

垂直多関節ロボットを主力製品として、自動車関連市場を中心にさまざまな分野の生産現場にて溶接・塗装・組立・搬送などの自動化に貢献している。安川電機は1977年に日本で初めて全電気式の産業用ロボットをMOTOMAN(モートマン)というブランド名で販売開始してから50万台強を世界中に出荷してきた。

3)システムエンジニアリング事業                                        

稼働が必須となる鉄鋼プラント・水処理プラントなどの各種大型プラント設備や大型クレーンを主な市場としている。また、太陽光発電用パワーコンディショナも扱っている。

 

2022年2月期通期の製品及びサービス毎の売上の内訳は以下の通りである。

 

部門名売上高(億円)%比率
モーションコントロール2,27347.4%
ロボット1,78737.3%
システムエンジニアリング52310.9%
その他2084.4%
合計4,791100%

 

また、地域別売上の内訳は以下の通りである。

 

地域名売上高(億円)%比率
国内1,48230.9%
米州75315.7%
欧州71714.9%
中国1,29427%
アジア(中国を除く)54111.3%
その他40.2%
合計4,791100%

 

グローバル・ネットワーク:需要地生産・集中生産の方針のもと、グローバル13ヵ国・地域29拠点で最適生産を行っている。顧客の近くで生産することによる納期面や関係構築面のメリットを生かしながら、為替や災害、地政学リスク等の低減を図っている。

 

ビジネスモデル:安川電機は顧客が日々直面している生産現場の生産性向上と高い品質要求に対し、サーボ、インバータ、そしてロボットといったメカトロニクスの技術と製品で、自動化など多くのソリューションを提供してきた。2017年に開始した「アイキューブ・メカトロニクス」というソリューション・コンセプト は、自動化ソリューションにビッグデータ活用・分析を融合させ顧客の生産現場から経営課題の解決に貢献している。具体的には生産現場を徹底的に自動化しデータはリアルタイムに収集・蓄積され、必要に応じて上位システムと連携し AI 学習やビッグデータ分析に活用される。その学習モデルや分析結果がフィードバックされ、生産の動きを改善する。

 

中期経営計画:現在の中期経営計画の最終年度の2022年度(2023年2月期通期)の財務目標は売上高4,700億円、営業利益610億円、営業利益率13%、ROE、ROICともに15%以上としている。これに関しては問題なく達成するだろう。注力する市場としては3C(Computer, Communication, Consumer Electronics)、ニューインフラ(「5G」や「新エネルギー車」、「AI」などを含む7つの分野を中心とした中国における産業のデジタル化)市場を中心とした中国・アジアでの攻略強化、「自動車」完成車/部品メーカーとの取り組み加速、「半導体」製造装置市場での取り組み強化し、2025年度に営業利益1,000億円を目標としている。

 

株価(2023/3/27)時価総額自己資本比率ROEROIC
5,630円1兆4,719億円50.9%11.7%8.5%
実績PER予想PERPBREV/EBITDA配当利回り
38.4倍28.6倍4.5倍17.8倍1.13%

 

③川崎重工業(7012)

川崎重工業の株価情報

会社概要:1896年創業。1949年東証上場。創業時は造船所を開設。大手総合重工業メーカー。オートバイ・航空機・鉄道車両・船舶・軍事ヘリコプターなどの輸送機器、その他機械装置を製造している。三菱重工業(MHI)・IHI(旧石川島播磨重工業)と共に三大重工企業である。上述した様に1968年に米ユニメーション社と合弁会社の川崎ユニメーションを設立し、1969年に日本初の国産産業用ロボットを発表した。社内カンパニー制をとっており、航空宇宙システムカンパニー、川崎車輌株式会社、エネルギーソリューション&マリンカンパニー、精密機械・ロボットカンパニー、カワサキモーターズ株式会社がある。半導体向けロボット世界シェア 1位、非常用ガスタービン国内シェア1位、モーターサイクル401cc以上国内シェア1位。国内生産拠点17か所、海外生産拠点22か所。海外売上高比率は2022年3月期通期時点で55.7%。

 

事業ごとの主要製品は以下の通りである。

宇宙航空システム:防衛航空機、民間航空機分担製造品、民間向けヘリコプター、誘導機器・宇宙関連機器、航空機用エンジン、航空機用ギアボックス  

車輌:各種電車(新幹線・新交通システムを含む)、機関車、客車、台車

エネルギーソリューション&マリン:産業用ガスタービン・コージェネレーション、発電用ガスエンジン・ディーゼル機関、蒸気タービン、産業プラント、LNGタンク、液化水素タンク、ごみ焼却プラント、搬送機械、トンネル掘削機、船用ガスタービン・減速装置、船用レシプロエンジン、水力機械、ガス運搬船、液化水素運搬船、ジェットフォイル、潜水艦等

精密機械・ロボット:建設機械用油圧機器、 農業機械用油圧機器、 産業機械用油圧機器・装置、舶用舵取機、 舶用各種甲板機械、産業用ロボット、 医薬 ・医療用ロボット

モーターサイクル&エンジン:二輪車、オフロード四輪車、 パーソナルウォータークラフト、 汎用エンジン

 

2022年3月通期の事業ごとの売上構成比内訳は以下の通りである。

 

事業名売上(億円)%比率
宇宙航空システム2,97219.8%
車輌1,2618.4%
エネルギーソリューション&マリン2,97219.8%
精密機械・ロボット2,52116.8%
モーターサイクル&エンジン4,47229.8%
その他8105.4%
合計1兆5,008億円100%

 

事業活動と戦略(グループビジョン2030):「陸・空輸送システム」「モーションコントロール&モータービークル」「エネルギー&マリンエンジニアリング」の3つのグループで事業を運営し、各事業の連携をより効果的なものとしていく。陸・空輸送システムでは安定した品質とコスト競争力を武器とした航空機・車両事業の運営。モーションコントロール&モータービークルでは量産事業における経営資源の融通、コア・コンポーネント事業のシナジーの追及をする。エネルギー&マリンエンジニアリングでは水素事業を中心としたエネルギー・舶用のエンジニアリング事業の展開を目指している。

 

グループビジョン2030の財務目標:2017年3月期~2019年3月期の中期経営計画「中計2016」はブラジルでの造船合弁事業の失敗を始めとして複数事業で大型プロジェクト損失を計上し、数値目標は未達となった。この経験よりROICの絶対数値目標を設定しなくなった。2030の財務目標は売上高年平均成長率5%、 営業利益率5~8%、 税引前ROIC:資本コスト+3%以上である。2022年3月期通期の営業利益率は3%、税引前ROICは3.5%であった。

 

株価(2023/3/27)時価総額自己資本比率ROEROIC
2,758円4,619億円22.9%3.9%7.0%
実績PER予想PERPBREV/EBITDA配当利回り
21.2倍8.6倍0.8倍7.9倍2.54%

 

④セイコーエプソン(6724)

セイコーエプソンの株価情報

会社概要:1959年創業。2003年東証上場。インクジェットプリンターを始めとするプリンターや、プロジェクター、パソコン、スキャナーといった情報関連機器、水晶振動子(クォーツ)、半導体などの電子デバイス部品の製造、さらに産業用ロボットや小型射出成形機、分光ビジョンシステムなどの産業用機器の製造を行っている。また子会社ではないものの、セイコーグループ株式会社、セイコーインスツル株式会社とともに「セイコーグループ中核3社」の1つとされ、SEIKOブランドの各腕時計の開発・生産も行っている。また、現在では、オリエント時計の事業を統合し、オリエントスターやオリエントブランドの腕時計の開発・生産・販売もエプソンで行っている。スカラロボット(水平多関節ロボット)は11年連続世界シェア一位を獲得している。(出所:富士経済『2012~2022年版ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望』)スカラロボットの他にプロジェクター(500ルーメン以上)、水晶発振器が世界シェア一位である。海外売上高比率は2022年3月期通期時点で80%であった。

 

ロボット事業参入のきっかけ:機械式時計の部品製造を祖業としてスタートしたセイコーエプソンは省エネルギー、小型化、高精度を追求し、技術を積み重ねてきた。ロボティクス参入は1983年に時計の組み立ての社内自動化の際にスカラロボットを自社開発した事がきっかけである。ロボティクスソリューション事業としては、省・小・精の技術にセンシング技術を加えたロボティクス技術、自社がユーザーとして進めてきた生産技術力、プリンターやプロジェクター等で構築した世界に広がるネットワークを活かし、小型精密ロボットのリーディング企業である。

 

事業ごとの主要製品は以下の通りである。

プリンティングソリューションズ事業セグメント:オフィス・ホーム用インクジェットプリンター、カラーイメージスキャナー、商業・産業用インクジェットプリンター、インクジェットプリントヘッド、POSシステム関連製品、ラベルプリンター、およびこれらの消耗品等

ビジュアルコミュニケーション事業セグメント:液晶プロジェクター、スマートグラス等

マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業セグメント:産業用ロボット、小型射出成形機、ウオッチ、ウオッチムーブメント、水晶振動子、水晶発振器、水晶センサー 、CMOS LSI 、金属粉末、表面処理加工、PC等

 

2022年3月通期の事業ごとの売上構成比内訳は以下の通りである。

 

事業名売上(億円)%比率
プリンティングソリューションズ7,78969%
ビジュアルコミュニケーション1,58114%
マニュファクチャリング関連・ウェラブル等1,91917%
合計1兆1,289100%

 

 

長期ビジョン Epson 25:セイコーエプソンは2016年に長期ビジョン Epson 25を発表した。2025年に向けたエプソンが進むべき方向性として、"「省・小・精の価値」で、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造する"を掲げ、私たちの強みを生かせる4つの領域でイノベーションを起こし、持続可能で豊かな社会をつくり出すことを目指しているとした。その中で2025年度(2026年3月期通期)の業績目標として売上1兆7,000億円、事業利益(売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出)2,000億円、事業利益率12%を目標としてあげていた。しかし2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻、中国のロックダウン、欧米のインフレといったマクロ経済の環境の変化があり、業績目標について振り返ったところ過度な売上成長を前提とした計画は達成不可能であると判断をし、2022年4月にEpson 25について見直しをした。

 

長期ビジョン Epson 25 Renewed:2022年に見直しをしたEpson 25 Renewed の内容は以下のものである。事業を成長領域、成熟領域、新領域に分けた。成長領域(オフィスプリンティング、商業・産業プリンティング 、プリントヘッド外販、生産システム(産業ロボットを含む))のビジネスは環境変化を機会と捉えて経営資源を投下する方針である。成熟領域 (ホームプリンティング、プロジェクション、ウオッチ、マイクロデバイス)のビジネスは構造改革や効率化などにより収益性を重視する方針である。新領域(センシング、環境ビジネス)のビジネスは新たな技術・ビジネス開発
に取り組む 方針である。新たに設定したKPIは2023年度にROIC8.0%、ROE10%、ROS(事業利益/売上収益)8%以上、2025年度にROIC11%、
ROE13%、ROS10%以上を目標としている。

 

株価(2023/3/27)時価総額自己資本比率ROEROIC
1,869円6,233億円22.9%3.9%7.0%
実績PER予想PERPBREV/EBITDA配当利回り
7.0倍9.6倍0.9倍2.2倍3.86%

 

⑤不二越(6474)

不二越の株価情報

会社概要:1928年創業。1949年東証上場。機械工具の国産化をめざして創業。戦後の高度経済成長にのり総合機械メーカーとして成長。機械工具事業、ロボット事業、機能部品事業、マテリアル事業を手掛ける。ブランド名は「NACHI」。不二越の強味は工具の元となる材料から、工具を使う工作機やロボットまでを事業領域として持っている。 モノそのものをつくり出すことから、モノとモノが接するミクロの現場、IoTやAI等の技術を駆使して複雑なシステムを稼動させるという事を一気通貫で実現できる企業である。ロボット事業に参入したのは1968年である。工作機械の自動化技術と油圧制御技術を応用し事業化した。1970年代に入り世界初の電動式多関節溶接用ロボットを開発した。海外売上高比率は2022年11月通期時点で49%であった。

 

事業ごとの主要製品は以下の通りである。

機械工具事業:切削工具、塑性加工工具、切断工具、工作機械、機械加工システム

ロボット事業:ロボット、ロボットシステム、電子機器

機能部品事業:ベアリング、油圧機器、カーハイドロリクス

マテリアル事業:特殊鋼、コーティング、工業炉 

 

2022年11月通期の商品別売上構成比は以下の通りである。

 

商品名売上(億円)%比率
工具29913%
工作機械1376%
ロボット27512%
ベアリング72232%
油圧機器71031%
特殊鋼・
工業炉他
1376%
合計2,291100%

 

 

事業戦略:不二越は元々自動車市場向けの売上が大きいが(2022年11月通期時点で売上の47%)、EVと産業機械に注力している。EV向けはeアクスル(EV等モーターを主導力とする車が走るために必要な主要部分を1つにまとめ、パッケージ化したものでギア、モーター、インバーター等の部品から構成される)、モーター、減速機、電動コンプレッサー、ロック機構等に組み込まれる部品やEVの生産設備に使用されるロボット等が売上に大きく貢献しているが、新商品も開発し、更にEV向けに売上を伸ばす予定である。産業機械分野では需要拡大が見込まれる電機・電子や一般産業機械分野で新しい需要を開拓、新商品を投入する予定である。

 

株価(2023/3/27)時価総額自己資本比率ROEROIC
3,820円899億円41.7%8.2%4.7%
実績PER予想PERPBREV/EBITDA配当利回り
7.4倍7.2倍0.6倍4.4倍2.88%

 

 

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