目次

  1. 新NISAにピッタリ!な商品
  2. ソフトバンク種類株を振り返る
  3. まだある!種類株を発行しそうな企業
  4. まとめ

1. 新NISAにピッタリ!な投資商品

以前の記事新NISA成長投資枠にピッタリの商品として、通信事業を手掛けるソフトバンク株式会社が2023年11月に東証に上場した社債型種類株式( 「SB種類株」といいます)を紹介しました。

社債型種類株式は、社債と株式の性格を併せ持つ商品であり、通常の株式と比べて値動きが緩やかな一方、一般の社債に比べて高い安定した配当収入が約束されていることから、投資初心者にとって手掛けやすい商品であると考えたからです。SB種類株の上場から約5ヶ月が経過し、この間の値動きを確認できたことも、投資の安心感につながるものでしょう。

仮に新NISA成長投資枠で600株(約240万円)のSB種類株を購入すれば、今後5年間、毎年60,000円の配当を受け取ることができます(ソフトバンク株式会社に不測の事態が起こらない限り)。同じ金額を銀行の定期預金に預けた場合(利率0.2%とします)、1年間の利息は4,800円に過ぎず、ここからさらに20%強の税金が差し引かれます。

国民の資産形成のために、わざわざ国が用意してくれた非課税投資制度の新NISA、賢く利用したいものです。

本記事の執筆時点で、東証で売買可能な社債型種類株式は、依然としてSB種類株のみです。但し、種類型株式の発行登録を実施した企業が新たに2社現れたため、今後種類株式の選択肢は拡がりそうです。

また、商品性はやや異なるものの、優先株式であれば、4月中に配当の権利を獲得できる商品もあります。

いまだ新NISA投資の第一歩を踏み出せない貴方、2024年分新NISA成長投資枠が残っている貴方のために、リスクを抑えた高配当商品である種類株式、優先株式への投資を紹介します。

2.ソフトバンク種類株を振り返る

ソフトバンク第1回社債型種類株式(証券コード: 94345)は、2023年11月2日に東証プライム市場に上場した投資商品です。上場後約5ヶ月が経過し、2024年3月28日には初の配当の権利落ちを迎えました。

権利落ち日までの株価は、一時的な変動を除けば、概ね発行価格である4,000円から上下30円程度の極めて狭いレンジで取引されました。

(Source: 大和証券サイトのチャートを執筆者が加工)

 

この間、固定利回り商品である種類株式にとって逆風となる、日銀のマイナス金利解除が実施されたことを考えれば、発行価格に対して1%にも満たない株価の動きは、投資初心者にとって安心な材料と言えそうです。

注目された配当落ち日の株価も、朝方一時3,968円まで下げる場面はあったものの、その後は4,000円近くまで戻しています。第1回配当は、1株当たり41.53円が予定されているので、配当落ちの影響は、初回の配当額以下でした。

2029年3月まで今後5年間の年間配当は100円(予定)なので、最低取引単位である100株を4,000円で買えば、40万円の投資に対して1万円の配当(利回り2.5%)を毎年受け取ることができます。新NISAの成長投資枠240万円すべてを使って600株を購入した場合、毎年6万円の配当を受け取ることができます。

4,000円より安くSB種類株を購入できれば、2029年4月1日に高い確率で、ソフトバンク株式会社が発行価格(4,000円)で種類株を買い戻してくれる(確約されたものではありません)ので、譲渡益も期待できます。

SB種類株は、とにかく損をするのは嫌!という投資初心者が手掛けやすい商品と言えそうです。

3.まだある!社債型種類株式を発行しそうな企業

SB種類株の上場以降、相次いで2社が新たに種類株式発行の準備作業である発行登録を実施しました。第2号は前田建設工業などを傘下に置くインフロニア・ホールディングス株式会社(5076)で、発行規模は最大1,500億円、第3号は楽天グループ株式会社(4755)で、発行予定額の上限は1,000億円とされています。

信用格付が低い点にやや難はありますが、知名度が高く、かなり高い利回りが想定される楽天グループが、種類株式の発行、上場に動けば、新NISA成長投資枠を使って投資できる高配当商品として相応の注目を集めるかもしれません。

今後、種類株式の一般的な認知度が上がれば、更に多くの企業が発行に動き、選択肢が増加することで、さらに種類株式の認知が進むのではないかと考えます。

固定配当の分かりやすさと、東証でいつでも売買できる流動性を兼ね備え、一定価格での買戻しを見込める社債型種類株式は、投資に不慣れな人が多い我が国で、人気が上がる条件を備えているのではないでしょうか。今のうちに慣れておくと、いいことがあるかもしれません。

次の種類株の発行なんか待ってられない。今すぐ投資できる商品を知りたい!という気の短い貴方のために、4月に買えば、配当に加えて株主優待品まで受け取れる投資商品を紹介します。

伊藤園第1回優先株式(25935)

その商品は、「おーいお茶」でお馴染みの伊藤園が発行する、第1回優先株式 ( 「伊藤園優先株」といいます)です。SB種類株がソフトバンクの9434の最後に5を加えた5ケタの証券コードになっているのと同様、伊藤園優先株の証券コードも、伊藤園(2593)に5を足した25935です。

SB種類株同様、証券会社でのオンライン取引が可能で、新NISA成長投資枠での投資が可能です(リアル証券の一部ではオンライン注文ができないようです)。

伊藤園優先株は2007年9月に上場しており、既に17年の実績を有しています。優先株式の名前の由来は、普通株式よりも配当や残余財産の分配が優先的に行われることにあります。伊藤園優先株式には普通株式のような株主総会での議決権はありません。

SB種類株が固定配当を約束しているのに対し、伊藤園優先株の配当は普通株式配当の1.25倍とされており、配当額自体が約束されているわけではありません。したがって、投資にあたっては、発行体の事業の安定性や成長性を考える事がより重要です。

参考までに、伊藤園優先株の2023年4月期の年間配当(実績)は、普通株式の40円/株に対して50円/株でした。2024年4月の配当(予定)は、普通株式の42円に対して、優先株は54円とされています。3月27日の優先株終値は1,895円だったため、予想利回りは2.8%程度と計算されます。

今後、伊藤園の利益が拡大すれば、配当の増加も期待できます。一方、減益により配当が減少する可能性もあるほか、SB種類株のような一定価格での買戻しが期待しづらい点には留意が必要です。

伊藤園優先株の株価の動きは、伊藤園の普通株式に比べれば、はるかに穏やかなものの、SB種類株よりは大きめです。実際、2021年の春に2,600円を超えていたのに対し、足もとでは1,800円台で取引されています。したがって、伊藤園優先株は、SB種類株よりももう少し大きなリスクに耐えられる投資家向きの商品と言えるでしょう。

(Source: 大和証券HP)

 

下のチャートのピンク色の線が伊藤園優先株、青色の線が伊藤園普通株式の株価動向を示しています。

(Source: 大和証券HP)

ちなみに、伊藤園優先株では、発行体が普通株式への転換権を保有しており、伊藤園は優先株を普通株式に1:1で転換する権利を持っています。普通株式は、優先株のほぼ2倍の株価で取引されているので、実現するなら大きなアップサイドです。転換が実現する可能性は、極めて低いと思いますが。。

また、直近の動きとして、伊藤園は2023年11月に優先株を対象とする自社株買いを決議し、2024年3月にかけて150万株(約28億円)を市場で取得しました(平均取得価格:1,872円)。決議時点で、優先株は1,800円程度で取引されていたことを考えると、発行体はこの水準を安すぎると考えている、とのメッセージを読み取ることができます。

さらに、伊藤園優先株の保有者は、株主優待品を受け取ることができます。毎年4月の権利確定日に100株以上を保有する株主に対して、1,500円相当の優待商品(お茶、ジュース等の詰め合わせ)が送られます。普通株と優先株を100株ずつ保有する場合、優待商品を2セットもらうことができます。

(Source: 伊藤園HP)

4月の配当と株主優待品を受け取るには、権利付売買最終日である2024年4月26日までに優先株を購入する必要がありますので、興味がある方は株価動向を注視してください。

 

まとめ

新NISAが始まった2024年、年初より株式市場が大きく上昇したため、出遅れて焦っている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、投資に焦りは禁物です。焦って飛び込むのではなく、自分に適した投資商品を選んだ上で、その商品の価格が自らのターゲットに来るのをじっくりと待つ姿勢が重要です。そしてチャンスが訪れた時には、機を逃さず投資してみましょう。

投資初心者は、損することの痛みを耐えがたいものだと考えているかもしれません。しかし、1回の失敗を恐れるあまり、投資を始めないと、投資に挑戦して成功した人との差は開いていく一方です。

まずは、値動きが緩やかで、高配当を期待できる身の丈に合った商品から投資を始めてみてはいかがでしょうか?今回紹介した社債型種類株式や優先株式が皆さまの投資デビューのきっかけとなり、順調な投資生活のスタートを切っていただければ幸いです。