【注目ポイント】 業績の下振れリスクは小さいが株価は金利動向次第?

 

株価(2022/10/25)    時価総額自己資本比率    ROE*    ROIC*
250.66USD(日中取引終値)1.869兆USD(約277兆円)       48.2%  47.15%    26.1%
    PER(実績)  PER(弊社予想)        PBR配当利回りEV/EBITDA
            25.09倍    25.84倍      10.84倍     N/A     17.58倍

                        *注:ROE、ROICは過去12カ月の実績数値。

2023年1Q決算結果

売上高 501億ドル(約7兆4,100億円、前年同期比 11%増、4Q2022比▲3.4%)

営業利益 215億ドル (同6%増、同4.8%増)

営業利益率 42.9%   (同▲1.8pt、同3.3pt増)

四半期純利益 176億ドル(同▲14%、同4.9%増)

希薄化後EPS     2.35ドル (弊社予想2.41ドル)

増収減益の決算だった。売上は前年同期比11%増であったが、四半期純利益は同▲14%であった。前年同期には33億ドルの税制優遇を受けていたことも減益の要因の一つであった。クラウド・コンピューティングの”Azure”と他のクラウド・サービスの売上の伸びが同20%増と前四半期(FY20224Q)の40%増から大幅に減速した。ドル高の影響と消費者の購買力の低下から「Windows」販売が前年同期比15%減少した。法人向けの「office 365」の売上は同11%増加し、「Microsoft 365」の加入者は同13%増加し6,130万人となった。FY20224Q決算発表時にクラウド事業に使用されているサーバーとネットワーク機器の会計上の耐用年数を延長するとの会計方針の変更を発表したが、この変更を除いてクラウド事業の粗利益率は他のクラウド商品より利益率の低いAzureの比率が多くなった事、またエネルギー価格の上昇により約3ポイント悪化した。

セグメント別内訳

Productivity & Business Processes事業法人および個人顧客向けの”Office”、”Office 365”、”Dynamics”と”Dynamics CRM Online”等。

セグメント売上高164.7億ドル前年同期比9%増
セグメント利益83.2億ドル同10%増
セグメント利益率50.5%同0.1pt増

 

Inteligent Cloud事業:”Windows Server” ”SQL Server””System Center” ”Azure””Enterprise Services”などのサーバ製品およびサービス等。

セグメント売上高203.3億ドル同20.2%増
セグメント利益89.78億ドル同16.9%増
セグメント利益率44.2%同▲1.2pt

 

More Personal Computing事業:”Windows”OSのライセンス収入、”Surface”や等のデバイス類、”Xbox”などのゲーム製品等。

セグメント売上高133.2億ドル同▲0.25%
セグメント利益42.17億ドル同▲15.3%
セグメント利益率31.6%同▲5.6pt

2Qのガイダンス

2Qの事業別の売上のガイダンスはProductivity & Business Processes事業の売上が為替の影響を除いて前年同期比11~13%増、166~169億ドル、Inteligent Cloud事業の売上が為替の影響を除いて22~24%増、212.5~215.5億ドル、More Personal Computing事業の売上は145~149億ドルを予想をしている。

為替が現状のままと仮定して売上原価は174~176億ドル、営業費用が143~144億ドル、営業外損益は1億ドルと想定していると発表をした。また2Qの法人税率は19~20%になるとの事である。

業績推移

MicrosoftFY20211Q20222Q20223Q20224Q2022FY20221Q2023
(単位:百万USD)       
総売上高168,08845,31751,72849,36051,865198,27050,122
売上原価52,23213,64616,96015,61516,42962,65015,452
粗利益115,85631,67134,76833,74535,436135,62034,670
粗利益率68.9%69.9%67.2%68.4%68.3%68.4%69.2%
研究開発費20,7165,5995,7586,3066,84924,5126,628
営業、マーケティング費用20,1174,5475,3795,5956,30421,8255,126
一般管理費5,1071,2871,3841,4801,7495,9001,398
減損とリストラ費用0000000
営業利益69,91620,23822,24720,36420,53483,38321,518
営業利益率41.6%44.7%43.0%41.3%39.6%42.1%42.9%
営業外利益(費用)ネット1,186286268(174)(47)333 54 
税引前利益71,10220,52422,51520,19020,48783,71621,572
法人税等9,831193,7503,4623,74710,9784,016
純利益61,27120,50518,76516,72816,74072,73817,556
普通株主に帰属する純利益61,27120,50518,76516,72816,74072,73817,556
完全希薄後株式数7,6087,5677,5557,5347,5067,5067,485
完全希薄後EPS8.052.712.482.222.239.652.35
        
修正EBITDA*83,83123,97626,24224,64525,04299,90526,500
修正EBITDAマージン49.9%52.9%50.7%49.9%48.3%50.4%52.9%
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬費用    
        
営業キャッシュフロー89,03524,54014,48025,38624,62989,03523,198
設備投資額23,8865,8105,8655,3406,87123,8866,632
フリーキャッシュフロー65,14918,7308,61520,04617,75865,14916,566

                 (注:マイクロソフト社決算資料に基づき株式会社pafin作成)    

業績予想       

FY2023予想1Q(実績)2Q(予想)3Q(予想)4Q(予想)
 Sep-22Dec-22Mar-23Jun-23
売上高50,122  51,211  55,28357,052
営業利益21,51821,252  23,21923,409
税引前利益21,57221,35223,14923,329
法人税等4,0164,164   4,3984,432
純利益(親会社株主帰属)17,55617,18818,75118,896
完全希薄後株式数7,4857,467   7,4557,440
完全希薄後EPS2.352.302.522.54

                                               (注:マイクロソフト社決算資料に基づき株式会社pafin作成)

投資判断

ドル高と消費者の購買力の低下からMore Personal Computing事業の売上は2Qに更に減速すると思われるが、法人向けの”Office 365”を主体としてProductivity & Business Processes事業は底堅く推移し、Inteligent Cloud事業は二桁増は達成すると考えている。他の大手IT企業より業績の下振れリスクは小さいと思われるが株価のパフォーマンスは金利動向に左右されるだろう。

 

執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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