株価350.98USD(日中取引終値)
時価総額2.61兆USD(約367兆円)
自己資本比率45.6%
ROE 38.6%
ROIC 25.87%
PER(実績)37.39倍
PBR13.18倍
配当利回り0.78%
EV/EBITDA 24.97倍

                        *注:株価は2023/7/25時点。ROE、ROICは過去12カ月の実績数値。

2023年4Q決算結果

売上高562億ドル(約7兆9,186億円、前年同期比8%増、2Q比6.3%増)
営業利益243億ドル (同18%増、同8.5%増)
営業利益率43.2%(同3.6ppt増、同0.9ppt増)
四半期純利益201億ドル(同20%増、同9.7%増)
希薄化後EPS2.69ドル   

増収増益の好決算だった。売上高は前年同期比8%増、営業利益は同20%増、営業利益率は同3.6ppt増、四半期純利益は同20%増であった。為替の影響を除くと売上高は同10%増、営業利益は同21%増、四半期純利益は同23%増であった。売上高、EPS共に市場予想を上回った。しかし、Azureの売上の伸率が3Qより若干鈍化した事が嫌気されて時間外取引で4%近く株価は下落した。4Qに46億ドル相当の自社株買いを行った。

総売上高のうち半分以上がAzureの売上となった。法人向け需要の好調が続いている。Dynamics365( Azure 上で提供されているSaaS型のCRMパッケージ)が同25%増、Azureとその他クラウドが同26%増と高い伸びであった。また法人向けのOffice365は同15%増であった。

 

セグメント別内訳

  • Productivity & Business Processes事業法人および個人顧客向けの”Office”、”Office 365”、”Dynamics”と”Dynamics CRM Online”等。
セグメント売上高182.9億ドル前年同期比10.2%増
セグメント利益90.5億ドル同25%増
セグメント利益率49.5%同5.9ppt増

Office365とDynamics365の好調な伸びで粗利益は14%伸び、またLinkedIn、Officeのマーケティング費用も減少したために営業費用減となりセグメント利益が25%増と高い伸びを達成した。

  • Inteligent Cloud事業:”Windows Server” ”SQL Server””System Center” ”Azure””Enterprise Services”などのサーバ製品およびサービス等。
セグメント売上高239.9億ドル同15.3%増
セグメント利益105.3億ドル同19.5%増
セグメント利益率43.9%同1.3ppt増

Azureと他のクラウド・サービスの売上高は前年同期比26%増となり、粗利益率は同16%増となり、営業費用も同10%増であったが、セグメント利益は19.5%増となった。

  • More Personal Computing事業:”Windows”OSのライセンス収入、”Surface”や等のデバイス類、”Xbox”などのゲーム製品、検索型広告等
セグメント売上高139億ドル同▲3.9%
セグメント利益46.8億ドル同4.2%増
セグメント利益率33.7%同2.6ppt

売上はデバイス、ウィンドウズOEMの二桁減が広告の増加で多少相殺されたが、前年同期比3.9%減となった。しかし、営業費用が同9%減となったためにセグメント利益は同4.2%増となった。

Azure OpenAIサービス等

Earnings call内でAzure OpenAIサービスの顧客数は3Qで2,500社強であったが、4Q末時点で11,000社と3Q比4倍以上増加したとナデラCEO大手企業が他社のクラウド・コンピューティングからの乗り換えが続いている状況である。Azure Arc(Azureで提供されるハイブリッドクラウド環境やオンプレミス環境を統合管理できるサービス)の顧客数は前年同期比150%以上の18,000社となった。

4QにMicrosoft Fabricという新たな分析プラットフォームをローンチした。この新サービスは顧客のデータ分析のプロジェクトの規模の拡大とクラウド支出の削減の声を受けて開発したもので、企業が必要としているデータやアナリティクス関連のあらゆるツールを統合した、統一アナリティクスプラットフォームであるが、既に8,000社がトライアル中である。

1Q2024のガイダンス

1Q2024の事業別の売上のガイダンスはProductivity & Business Processes事業の売上が為替の影響を除いて前年同期比9~11%増、180~18183億ドル、Inteligent Cloud事業の売上が為替の影響を除いて14~15%増、233~236億ドル、More Personal Computing事業の売上は125~129億ドルを予想をしている。

為替が現状のままと仮定して売上原価は166~168億ドル、営業費用が135~136億ドル、営業外損益は約3億ドルの営業外収益を想定している。またFY2024の法人税率は約19%になる予定との事である。

業績推移

Microsoft4Q20221Q20232Q20233Q20234Q2023
(単位:百万USD)     
総売上高51,86550,12252,747    52,857 56,189
売上原価16,42915,45217,488    16,128     16,795 
粗利益35,43634,67035,259    36,729     39,394 
粗利益率68.3%69.2%66.8%69.5%70.1%
研究開発費6,8496,6286,844      6,984       6,739 
営業、マーケティング費用6,3045,1265,679      5,750       6,204 
一般管理費1,7491,3982,337      1,643       2,197 
減損とリストラ費用0000
営業利益20,53421,51820,399    22,352     24,254 
営業利益率39.6%42.9%38.7%42.3%43.2%
営業外利益(費用)ネット(47)54 (60)         321          473 
税引前利益20,48721,57220,339    22,673     24,727 
法人税等3,7474,0163,914      4,374       4,646 
純利益16,74017,55616,425    18,299     20,081 
普通株主に帰属する純利益16,74017,55616,425    18,299     20,081 
完全希薄後株式数7,5067,4857,473      7,464       7,465 
完全希薄後EPS2.232.352.20        2.45         2.69 
      
修正EBITDA*25,04226,50026,585    28,366     30,544 
修正EBITDAマージン48.3%52.9%50.4%53.7%54.4%
*修正EBITDA=営業利益+減価償却費用、のれん代償却費用+株式型報酬費用
      
営業キャッシュフロー24,62923,19811,173    24,441     28,770 
設備投資額6,8716,6326,274      6,607       8,943 
フリーキャッシュフロー17,75816,5664,899    17,834     19,827 

(注:マイクロソフト社決算資料に基づき株式会社pafin作成) 

                   

業績予想コンセンサス       

 4Q(実績)FY23(実績)1Q(予想)FY24(予想)
売上562億USD2,119億USD520.9億USD2,221億USD
完全希薄化後EPS2.699.692.759.89

       (注:株式会社pafin調べ)

投資判断

売上高比率でAzureが50%以上を超えマイクロソフト社にとって新たな成長ステージを迎えた印象の決算であった。AIとクラウド・コンピューティングが主軸となり新商品をローンチしていくのだと思われる。4QにローンチしたMicrosoft Fabricという統合アナリティクス・プラットフォームも多くの企業がトライアル使用をしているとの開示があったが、このプロダクトも大企業のみならずクラウド支出を削減したい中小企業にとっても魅力的であると思われ高い成長が期待される。個人的にはビッグテックの中で一番大きく成長する企業だと思うが、その割にバリュエーションが予想PER30倍台とテスラの半分以下であるが、もっと評価されてもよいのではと思う。

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