前回半導体市場アップデートのレポートを書いたのが9月の終わりであるが、前回レポート以降半導体各社の情報が出てきているので整理しておきたい。

半導体企業の直近のニュース

  社名                   ニュース
キオクシア(旧社名東芝メモリ)2022年10月よりNAND型フラッシュメモリーを3割減産
サムスン電子2022年7~9月期の連結営業利益は前年同期比32%減の10兆8000億ウォン(約1兆1100億円)だった。営業利益が前年同期比で減少したのは19年10~12月期以来で、およそ3年ぶり。足元で半導体市況は悪化しているものの、メモリーと受託生産の両事業で生産能力を高めていく方針。
AMD(米、Advanced Micro Devices)3Q(7~9月)の暫定売上高が56億ドルと自社事前予想(67億ドル)、アナリスト平均を大幅に下回る。需要軟化やサプライチェーン上で在庫が積み上がっており、3Qには在庫関連で1億6000万ドルの評価損を計上予定。
TSMC(台湾)世界最大のファンドリー2022年7~9月期の売上高、純利益がともに四半期として過去最高を更新。売上高は前年同期比47.9%増の6131億台湾ドル(約2兆8000億円)、純利益は79.7%増の2808億台湾ドル。TSMCはアップルのiPhone14シリーズに先端半導体を独占供給している。年初から進めた受託生産の値上げや、為替の米ドル高・台湾ドル安も、売上高や利益の押し上げ要因となった。iPhoneなどに搭載する最先端の5ナノは堅調だが、一般のスマホやパソコンに搭載する1世代前の7ナノは需要が弱まったとTSMCのCEOはコメント。22年12月期通期の設備投資額は360億米ドル(約5兆3000億円)に下方修正した。期初予想設備投資は期初予想の400億~440億米ドル。

SOX指数

半導体企業各社から下方修正等のニュースが続く中SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は10月初頭に戻したものの再び下落トレンドに戻り反転しそうになさそうである。年初からのSOX指数の騰落率は▲44.4%である。

                       (出所:Yahoo Finance US)

半導体製造装置投資も下方修正

前回レポートを書いた時点ではメモリー関連の需要減のニュースがメインであったが、半導体製造装置(前工程)の投資額が下方修正された。

半導体需要の減速影響が製造装置分野に波及してきた。半導体業界の国際団体SEMIによるとウエハーに回路を形成する前工程の製造装置への2022年の世界投資額が前年度比9%増の990億ドル(約14兆3000億円)になる見通しだ。3年連続で過去最高を更新するのは6月時点の従来予想と変わらないが、投資額を100億ドル下方修正した。韓国向けの投資が前年比マイナスに転じる影響が大きい。DRAMなどメモリー需要の減速を受けて半導体メーカーが設備投資を絞り込み始めたことが背景にあるとみられる。今回、SEMIは23年の見通しも発表。22年比約3%減の9700億ドルと、4年ぶりの前年割れを想定した。従来予想は横這いの1090億ドルだった。

           (出所:ニュースイッチ、半導体の需要減速が波及…前工程装置投資、100億ドル下方修正)

世界の半導体市場と主要なプレイヤー

経済産業省がまとめた世界の半導体市場と主要なプレイヤーの図がとても分かりやすいのでここでシェアします。

             (出所:経済産業省、世界の半導体市場と主要なプレイヤー

アナリストビュー

予想していたが、半導体前工程装置投資も下方修正した。東京エレクトロン(8035)の株価は既に織り込み済みである。来月10日の2Q決算発表時に業界見通し及び通期業績予想の下方修正をするのか注目している。

執筆者プロフィール

株式会社pafin 

マーケットアナリスト 西村 麻美

西村麻美/mami.png

新卒でメリルリンチ証券東京支店入社後コーネル大学経営大学院にMBA留学。
卒業後東京に戻りHSBCアセットマネージメントにて日本株アナリスト、年金運用、アライアンスバーンスタイン東京支店にてプロダクト・マネージャーとして勤務後フリーランスのコンサルタントを経て現職。

 

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