今週の注目投資トピックは「上場企業、業績急ブレーキ―26年3月期 自動車・海運、相次ぐ減益予想―トランプ関税、先行き読めず」元記事はこちら

以下、5月13日の時事通信の記事より引用。

上場企業の2026年3月期の業績に急ブレーキがかかりそうだ。トランプ米政権の関税政策に伴う負担増に加え、政策自体が朝令暮改のため先行きの事業環境が見通せない。自動車や海運、商社など、グローバルに事業を展開する企業は相次ぎ減益予想を公表。日本国内での事業が中心の企業も、世界経済の減速を懸念している。

米国に建設機械などを輸出しているコマツは今期、追加関税により785億円のコスト増に加え、売り上げが520億円減るとみる。今吉琢也社長は、「トランプ関税がなければそこまで落ちない」と述べ、米国の関税政策が経済成長の鈍化と需要減を招くとの見方を強調した。

すでに25%の追加関税が課されている自動車業界はさらに深刻だ。トヨタ自動車は4、5月だけで1800億円の営業利益が吹き飛ぶとはじく。自動車販売台数が減少すれば、鋼材需要も落ち込む。日本製鉄は事業利益で数百億円程度のマイナス影響を織り込んだ。

「あまりに不確実性が高い」(先崎正文日立建機社長)として関税影響を業績予想に織り込まなかった企業も少なくない。

 日本郵船は経常利益で最大1000億円の影響が出ると見積もるが、「景気停滞の度合いを見通すことが不可能なほどパラメーター(変数)が多過ぎる」(曽我貴也社長)として織り込まなかった。第一三共や帝人も影響を計上していない。

 マツダやファナックは業績予想自体の公表を見送った。「流動的で、明確な見通しは立てにくい。もう少し時間をいただきたい」(毛籠勝弘マツダ社長)という。

商社は資源価格の下落や円高が直撃し、三菱商事や三井物産が減益を予想。各社ともトランプ関税の直接的な影響は限定的とみるが、「複数の国が絡み合うサプライチェーン(供給網)では、関税影響は当事国だけでなく広範囲に及ぶ」(石井敬太伊藤忠商事社長)と警戒する。

野村不動産ホールディングス(HD)やJR東日本、NECなど、内需に支えられる企業は好調な業績が続く見通し。ただ、「本当にグローバルで経済が低迷すれば需要が一部剥落する可能性がある」(新井聡野村不動産HD社長)と気を引き締めている。

SMBC日興証券の集計によると、東証株価指数(TOPIX)を構成する1148社のうち、12日までに25年3月期の決算発表を終えた630社の純利益の合計は前期比4.3%増。最終的に4年連続で過去最高を更新する見通し。26年3月期は一転、6.3%減と見込まれている。

2025年3月期通期の決算発表もごくわずかを残すのみであるが、2026年3月期の会社計画を見るとアメリカの関税政策の影響を受けて減益予想をしている企業が目立つ。25%の追加関税が決定している自動車会社に関しては以下のように業績予想をしている。

トヨタ自動車 売上高 48兆5,000億円(前期比1%増) 

      営業利益 3兆8,000億円(同▲20.8%)

      当期純利益 3兆1,000億円(同▲34.9%)

ホンダ      売上高    20兆3,000億円(同▲6.4%)

       営業利益   5,000億円  (同▲58.8%)

       当期純利益 2,500億円  (同▲75%)

日産自動車  売上高 12兆5,000億円(同▲0.1%)

       営業利益 未定

       当期純利益  未定   

SUBARU          業績予想未定

マツダ     業績予想未定

三菱自動車19   売上高 2兆9,500億円(同5.8%増)

        営業利益   1,000億円(同▲28%)

        当期純利益 400億円(同▲2.4%)

まず、トヨタの会社計画であるが、追加関税の影響を2025年4月と5月分だけしか反映していないとされている。関税政策が長く続く際にはトヨタは販売・利益への影響が無視できなくなり、見通しを下方修正せざるを得ない状況になるかもしれない。一方ホンダに関しては、カナダやメキシコから米国に輸入される約53万台の完成車に対して約3,000億円、部品や原材料で約2,200億円、二輪車やパワープロダクツで約1,300億円の影響を予想している。また、為替差損を約4,520億円(為替レートを1ドル=135円と想定し、前期から18円の円高を見込んでいる)と予想している。また、中国市場での販売台数を前年比▲2.6%の362万台としている。三菱自動車に関しては元々北米での売上の割合が低く、中南米、欧州、オセアニア、日本で売上増を予想しており、関税からの影響が一番小さいと言えるかもしれない。他の自動車メーカーに関しては業績予想を出していない。少なくとも日産自動車に関しては今期も赤字になると考えられる。

関税政策の影響は輸出企業への影響が大きく、現時点で今期も増益予想をしている企業は内需セクターや国内企業のD/X等特定の業種の好調は継続しそうである。

5月16日に米格付け会社のムーディーズが米国の長期発行体格付けと無担保優先債格付けを最上位の「Aaa(トリプルA相当)」から「Aa1(ダブルAクラス)」に1段階引き下げたと発表した。フィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングに続き、世界一の経済大国がトリプルA格付けを失った。米国の債務と財政赤字の急増により、国際資本の投資先としての優位が損なわれ、政府の借り入れコストが増大するとの不安が格下げの動きに反映された。

ムーディーズによる米信用格付けの引き下げの後、16日に米10年国債利回りは一時前日比6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い4.49%に上昇した。

ロイターの5月19日の記事によると(元記事はこちら 、以下ロイター記事より抜粋)

折しも米議会の上下両院で多数派を占める与党共和党は、2017年の第1次トランプ政権下で導入された「トランプ減税」の延長や各種歳出措置を盛り込んだ包括的な法案の可決を目指しており、成立すれば連邦債務はさらに数兆ドル(数百兆円)膨らむ恐れがある。トランプ大統領が打ち出した関税の行方については楽観的な見方も出ているが、この「大きく美しい一つの法案」に投資家は神経をとがらせている。16日に下院予算委員会が行った同法案の採決では、一部共和党議員の造反によって否決された。

ベセント財務長官はこれまで、トランプ政権は10年国債利回りの抑制に注力していると発言してきた。

さまざまな「期限」が近づいているため、事態は切迫している。共和党下院トップのジョンソン下院議長は、大きく美しい1つの法案を26日のメモリアルデーより前に本会議で可決させることを目指している。一方ベセント氏は議会に対して、7月半ばまでに連邦債務上限引き上げに合意するよう訴えてきた。ベセント氏は、議会が何らかの手を打たなければ、8月までに政府の手元資金が枯渇し、支払いを履行できなくなる可能性があるとしている。

ムーディーズの格下げが報じられ、週明けのアジア市場では株式市場は下落、為替はドル安となっている。アメリカ債務上限問題は、過去の事例と比較しても、財政状況の悪化、信用格付けの引き下げ、政治的な対立など、複数の要因が重なり、より深刻な状況となっている印象がある。今後の米議会の動向や市場の反応に注視する必要があるが、万が一ドルがデフォルトという事になれば、単なるトリプル安にとどまらず世界経済そのものがリーマンショック級あるいはそれ以上の混乱に突入する可能性が極めて高いと思われる。その際には有事の金、また「デジタルゴールド」のビットコインに投資が集中する事が考えられる。

日本企業の業績予想に関しては2026年3月期は減益予想をしている企業が多いが、万が一の米ドルのデフォルトという事態に陥れば、世界経済がリーマンショックの時以上の混乱に陥るリスクがあり、新たな株式でのポジションは控えた方が良いかもしれない。