目次

  1. 家賃上昇を予想する理由     
    a. マンション賃料動向     
    b. 全ての大家さんは賃料を値上げしたい。     
    c. 人口動態の変化(東京23区の場合)     
    d. 新築賃貸マンションの供給制約
  2. レジREITに投資しよう   
    a. 賃貸住宅特化型REITへの投資   
    b. 賃貸マンションを保有するREITへの投資   
    c. 住宅REITを集めたETFに対する投資
  3. まとめ

春闘「満額回答」続出!の朗報に喜んだのもほんのつかの間、インフレの嵐がやってきました。報道によれば、4月になって紙製品、食料品などを中心に2,800品目もの商品が値上げされたとか。まさに「値上げの春」の到来です。

食料品であれば価格の安い代替品を購入する、電気代であればマメに節電するなどの方法で、インフレから身を守ることができるかもしれません。

しかし、中には逃げ場が見つからないモノもあります。例えば、マンションの家賃です。家賃が安い物件を探すにしても、狭かったり、古かったり、はたまた駅から遠かったり。そもそも、引っ越しするにはお金がかかります。

いやいや、マンションなんていくらでもあるから、家賃が上がらないでしょ!とか、今のマンションに住み続けるなら家賃変わらないでしょ!などと考えている貴方、本当にそうですか?

事実、都心部のファミリータイプを中心に、家賃上昇は本格化しており、その値上げの波は、今後コンパクトタイプやシングルタイプにも及ぶと考えます。

給料が十分に上がっていれば、問題はないのかもしれません。でも、もしそうでなかったら?

自分にとって望ましくない事態に備えるのは、本来保険の役割です。運転中の事故に備えて自動車保険に入ったり、火事に備えて火災保険に入ったり。

では、家賃上昇に備える保険はあるのでしょうか?どうもそんな保険商品はなさそうです。でも、諦める必要はありません。なぜなら、家賃が上がった時に、その痛みを和らげる追加収入を得ることができれば、保険と似た効果を期待できるからです。

仮に月額10万円のマンションの家賃が5%上がれば、1ヶ月で5,000円、1年間で60,000円の追加出費が発生します。もし、現在の1年分の家賃と同額の120万円を4%で運用できれば、1年間で48,000円を受け取ることができます。そうすれば、給料から残りの12,000円をひねり出せばいいことになります。もし、5%以上で運用できれば、家賃の値上げを全て投資で補うことができる訳です。

年間4%、5%の運用は、決して無理なものではありません。2024年から始まった新NISAを使えば、非課税での投資が可能です。せっかくの制度を有効に活用してみませんか?

以前の記事で、都心ファミリータイプの家賃値上げに着目したレジREITへの投資を紹介しました。今回の記事でも、賃貸マンションを保有するREITへの投資を紹介しますが、その目的は、儲けるためというよりも、家賃上昇から身を守るためです。

1. 家賃上昇を予想する理由

a. マンション賃料動向

下のチャートは、アットホーム株式会社と三井住友トラスト基礎研究所が公表した「マンション賃料インデックス」(2024年3月公表分)です。2009年の1~3月を100として、四半期毎の成約事例をインデックス化しており、賃料のトレンドを見る上でとても役に立ちます。成約賃料は一般に、不動産会社等で締結された新規契約の賃料を言い、居住中のマンションの更新賃料に比べて、市場の動きが反映されやすいという特徴があります。

東京23区のファミリー向け(60㎡~100㎡)マンションの2023年Q4(10~12月)の値は、122.22でした。つまり、2009年1~3月に比べて22%高くなったということです。14年間の時間を考えると、それほど大きな上昇幅には見えないかもしれません。

注目すべきは、2019年以降の動きです(黄色の四角内)。2009年から10年間の上昇率がわずか5%程度だったのに対し、2019年Q2から2020年Q3にかけて、賃料は10%程度上昇しています。その後、一旦落ち着いたものの、2021年Q3から足もとにかけて、再び10%程度上昇しました。

つまり、2019年から5年弱で、ファミリータイプの賃料は約20%上昇したと言う訳です。2019年の賃料が月額200,000円だったとすれば、現在の賃料は240,000円に上昇、1年で考えれば、480,000円の大きな追加出費が発生しているはずです。

(Source: 三井住友トラスト基礎研究所HP 「マンション賃料インデックス」 )

直近の賃料(2023年10月~12月)をもう少し細かく見てみます。

ファミリータイプのインデックス122.22は、1年前に比べて5.2%、2年前に比べて7.0%の上昇幅です。これに対して、シングルタイプ(16㎡~30㎡)の足もとの値は114.74、コンパクトタイプ(30㎡~60㎡)は120.29だったので、長期的な上昇幅はファミリー向け>コンパクト>シングルの順になります。

過去2年を見ても、ファミリータイプの賃料はシングルタイプやコンパクトタイプの概ね1.5倍程度の上昇幅であったことが確認できます。

(Source: 三井住友トラスト基礎研究所HP 「マンション賃料インデックス」 )

こうしたファミリータイプ賃料上昇の背景にあるのは、コロナ禍で進んだマンション価格の上昇でしょう。

通勤の利便性が高いマンションに対する需要、円安を受けた海外からの投資需要に加え、建設費の上昇という供給面の影響もあり、マンション価格は急上昇しました。その結果、購入を断念した世帯が、都心の賃貸マンションを選択したことが、近年の賃料上昇につながったと考えられます。 とはいえ、足もと3ヶ月の動きを見ると、賃料の上昇には一服感が見えます。

それでは、上昇幅の大きかったファミリー向けを含むマンション賃料は、現在の水準で安定するのでしょうか?

この問題に対するヒントを探すため、これまでファミリータイプに比べ、賃料の上昇幅が小さかったシングルタイプの賃料をもう少し見てみます。東京23区のシングルタイプ賃料は、2年前に比べ4.7%、前年比では3.5%の上昇となりました。他の主要都市の状況は、以下のとおりです。

(Source: 三井住友トラスト基礎研究所HP 「マンション賃料インデックス」 )

首都圏で賃料の上昇幅が大きかった地域は千葉西部で、2年前から賃料の上昇傾向が続いています。また、他の主要都市で賃料の上昇が継続しているのは、仙台市、京都市、大阪市、福岡市といった都市です。埼玉東南部、札幌市、名古屋市では足もと賃料が下落しているものの、賃料が上昇傾向にある地域が大半です。

では、マンションの賃料はこれからどうなると思うか?と聞かれたら、更なる賃料上昇を予想している、と答えるでしょう。

特に、既に家賃水準が過去最高水準まで上昇しているファミリータイプよりも、東京23区や大都市のシングルタイプの賃料の上昇幅が大きくなる可能性があると考えます。

以下に理由を説明します。

b. 全ての大家さんは賃料を値上げしたい。

マンション賃料が上昇すると考える、シンプルかつ最大の理由です。当たり前ながら、全ての大家さんは状況が許せば賃料を引き上げたいと考えているはずです。

これまでマンション賃料(とりわけシングルタイプ)の上昇が緩やかだったのは、大家さんが上げたくなかったからではなく、上げられなかったからです。マンション賃料は、マンション間の競争に加え、「借地借家法」の影響を強く受けています。

「借地借家法」は、賃貸人に比べて力の弱い賃借人を保護するために制定された経緯から、テナントに有利な内容が多いのが特徴です。例えば、賃貸人は「正当な理由」なく、賃借人に対して家賃の増額請求ができません

長らく続いたデフレの時代は、賃料を引き上げる「正当な理由」を説明しづらい時代でもありました。このため、賃貸人が家賃を引き上げられるのは、交渉を要しない新しいテナントに部屋を貸す時に限定されていたと言えるでしょう。同じマンションに住んでいる限り賃料は変わらない、という認識が一般的に根付いているのは、こうした背景によるものだと思います。

しかし、インフレの定着は、今後の大家さんの行動に大きく影響を与えるでしょう。公表されるインフレ率や、賃料上昇を示すデータは、大家さんにとって「賃料引き上げ」の正当な理由を説明しやすくするものです。

新たなテナントだけではなく、更新期を迎えるテナントの賃料も上がり始めれば、賃料の上昇傾向はより鮮明になり、大家さんにとってより交渉しやすい状況を創り出します。所得の増加やインフレの定着により、テナントが値上げ慣れしてきたことも、大家さんにとっての支援材料になりそうです。

さらに、大家さん自身が支払う借入金利や、生活コストの上昇も、値上げに向けて賃貸人の背中を押すことでしょう。

もちろん、賃料上昇が日本全国で発生するなどと言うつもりはありません。人口減少が進む日本においては、他の地域からの転入者を集める東京23区や地域の主要都市と、それ以外の都市で二極化が進むと考えられます。

c. 人口動態の変化(東京23区の場合)

実際、日本全国から人を集める転入率が高い地域である東京においても、人口のピークアウトが予想されていますが、そのタイミングはまちまちです。

東京都全体では2030年の1,424万人で人口がピークアウトするとされています。一方、東京23区においては5年遅い2035年まで人口が増加、千代田区、中央区などの都心6区では、さらに10年遅い2045年まで人口が増加すると見込まれています。 

(Source: 東京都HP 「東京都の人口予測」」 )

つまり、日本全体として人口が減少する中で、都心への人口集中はより強まるということであり、都心部の賃貸マンションに対する需要は増加すると考えられます。

また、世帯の変化も賃貸マンションの需給に影響を与える要因です。東京都によれば、 世帯数は2030年をピークに減少するものの、単独世帯は逆に増加するそうです。

2020年に363万だった単独世帯は、2040年には404万世帯、つまり41万世帯(+11.2%) の増加が予想されています。増加の主因は、高齢単身世帯の増加で、こうした動きはシングルタイプの需要を押し上げると考えられます。

ここでは東京都のデータを使って説明しましたが、地方においても、その地域の中核都市への集中度が強まるのは共通の現象だと考えます。

d. 新築賃貸マンションの供給制約

供給サイドに影響を与える要因も見てみましょう。

東京23区では、いわゆる「ワンルームマンション規制」が導入されており、そのルールは厳格化の傾向にあります。

規制の内容は部屋の最低専有面積の拡大や、一定比率以上のファミリー向け居室の設置を、建設者に義務付けるものです。こうしたルールは、単身世帯の増加を抑制しようとの意図であり、シングルタイプのマンションの新規供給を減少させる方向に働くものです。

インフレが定着する中で、需要が拡大し、供給は制約を受けそうな点を考えると、都市部のマンション賃料、とりわけシングルタイプの賃料には、上昇方向に圧力がかかる可能性が高いと見られ、その現象は一時的なものでは済まないかもしれません。

では、賃料上昇リスクの高い賃貸マンションに暮らす人には、どのような自衛手段があるのでしょうか?       
        
もちろん、自宅を購入するという手もありますが、既に価格が高騰したマンションを購入するのは容易ではないでしょう。賃貸マンションに住み続けることを前提とするなら、必要なのは、賃料の増額に見合っただけ収入を増やすことです。もし、一部を給料の増加で賄えるなら、残りの部分を投資で補うという方法が考えられます。

2. レジREITに投資しよう

では、家賃の上昇から身を守るために、何をすべきか?手っ取り早く言えば、自分も大家さんになればいいという事になります。

何もサラリーマン大家を目指せ!などと言うつもりはありません。もっと簡単に少額の投資で大家さんになる方法があります。

それは、賃貸マンションを保有するレジ(住宅系)REITに投資をして、自分も疑似的な大家さんになることです。

住宅REITは数多くの賃貸マンションを保有しており、テナントから受け取る賃料を原資として投資家に配当を支払います。したがって、保有物件の賃料が上がれば、投資家が受け取る配当も増加が期待できます。さらに、賃料の増加は、保有物件の物件価値を上昇させるため、投資家は投資口価格(株価)の値上がりによる譲渡益を期待することができます。

つまり、賃貸マンションに住むあなたが支払う賃料が増加する際、レジREITの賃料収入も増加するため、より多くの分配金(配当)を期待できる訳です。他の条件が所与であれば、賃料上昇はREIT保有する物件の価値を上げ、投資口価格の上昇も期待できそうです。

以前の記事では、都心ファミリータイプの家賃引き上げに注目した住宅リートへの投資を紹介しました。都心のファミリー向け物件の保有比率が高いレジREITに投資することで、主にキャピタルゲインを狙う戦略でした。今回はインフレによる賃料上昇から身を守るのが目的なので、自分が暮らすマンションとタイプが近い物件を多く保有するREITを選択するのが良さそうです。

レジREITは、東京23区や首都圏に物件を集中させる傾向があります。したがって、自分が暮らす地域で物件を保有していないケースもあるでしょうが、最大の人口集中地である東京のマンション賃料は、他地域よりも早いタイミングで、より大きく変化する確率が高いので、賃料上昇リスクのヘッジには適していると言えます。

ここでは、3つの戦略を紹介します。どれか1つを選ぶ方法もあれば、複数を組み合わせる方法もあります。また、必ずしも1回で実行する必要はなく、予算や都合に合わせて、何度かに分けて取り組むのも有効だと思います。       
        
 

a. 賃貸住宅特化型REITへの投資

 今回は、東証に上場するレジREIT5法人のうち、2つのREITを紹介します。特徴として、時価総額はやや小さいものの、予想配当利回りは高めです。リスクヘッジのための長期保有を前提に、NAV倍率が低く、利回りが高めのREITを選びました。

両投資法人共に現在の予想分配金(配当)利回りは4%台の後半なので、分配金により賃料上昇を補う効果は大きそうです。

数値は2024年4月8日終値ベースで、J-REITの総合ポータルJapan REIT記載のものです。

証券コード投資法人名投資口価格(円)予想利回り(%)時価総額(百万円)NAV倍率
8979スターツ・プロシード投資法人211,3004.85%59,6870.88
3459サムティ・レジデンシャル投資法人109,8004.75%92,0920.90

(Source: Japan REIT HP)

各投資法人のHPによれば、スターツ・プロシードはポートフォリオのシングル比率が42.4%、DINKSが19.1%(賃貸可能面積)で、首都圏比率は75.8%(鑑定評価額)です。一方、サムティ・レジデンシャルはシングル比率が47.3%、コンパクト比率が40.8%で、首都圏比率は25.1%です(計算のベースが不明)。したがって、東京を含む首都圏に寄せたければ前者、それに拘らないなら後者を選択することになるでしょう。

過去5年間の投資口価格は、概ね似通った動きですが、5年間で見ると、全体的にスターツ・プロシード(青線)がアウトパフォームしているようです。

(Source: 大和証券サイトで執筆者が作成)

 

b. 賃貸マンションを保有するREITへの投資

賃貸住宅に特化してはいないものの、保有比率が高い複合型、総合型のREITを選択するという方法もあります。投資のポイントがややボケる面もありますが、より大きな投資分散効果を得られるでしょう。

数値は2024年4月8日終値ベースで、J-REITの総合ポータルJapan REIT記載のものです。レジ比率のみ、各投資法人HPに記載のものです。

証券コード投資法人名投資口価格予想利回り時価総額NAV倍率レジ比率(%)
8986大和証券リビング投資法人106,6004.32%256,5740.9372.3%
8966平和不動産リート投資法人140,7004.76%161,7960.9748.8%
3451トーセイ・リート投資法人146,3005.00%55,0750.9652.1%

(Source: Japan REIT HP)

大和証券リビングは、賃貸マンションを主体としつつ、シニア向け施設にも投資、平和不動産リートは賃貸マンションとオフィスへの投資がほぼ半々、トーセイ・リートは賃貸マンションを主軸にオフィスや商業施設にも投資をしています。

他にも賃貸マンションがポートフォリオの25%前後を占めるREITが複数ありますので、そうした中から複数のREITに投資をすることも可能です。

 

 

c. 住宅REITを集めたETFに対する投資

色々考えることなくシンプルに戦略を実行したいと考えるなら、上場投資信託であるETFに投資する方法があります。

グローバルX レジデンシャル・J-REIT ETF (2097)  2024年4月8日終値: 1,020円

レジREITに加え、賃貸住宅を投資対象とする計15REITを組み込んだETFです(2024年4月8日時点)。

1口単位での投資が可能なため、最小1,000円程度から、自分の予算に合わせた投資ができ、配当は偶数月の隔月です。2023年10月の上場で、1年間の分配実績がないため、正確な配当利回りは不明ですが、3%台半ば程度と予想されます。

3. まとめ

インフレにより世の中では様々なモノやサービスの値段が上昇しています。長らく続いたデフレが終わり、インフレが定着する中では、我々を取り巻く状況も大きく変化します。

同じマンションに長く住み続けている人にとっては、想像しづらいかもしれませんが、家賃についても例外ではありません。実際、都心のファミリー向けを中心に新規賃料は上昇傾向にあり、今後は更新時の継続賃料についても値上げが波及する可能性は相応に高いと見ています。

一見身を守るのが難しく見える家賃の値上げですが、賃貸マンションを保有するレジREITに投資を行うことで、自分自身を大家さんと同じような立ち位置にすることが可能です。

また、今年から始まった新NISAを使えば、非課税で投資ができるため、より大きなヘッジ効果を期待できそうです。自分自身の身を守るための投資を考えてみませんか?